蓄電池の見積もりを取ったものの、その金額に見合う効果があるのか判断できないまま止まっている——大規模施設の設備担当者から、こうしたご相談が増えています。提案書に並ぶ「電気代削減」の中身が、施設ごとの前提に委ねられているためです。
この記事では、蓄電池で下がるのは請求書のどの部分か、必要な容量をどう計算するか、効果を取りこぼす施設の共通点を順に整理します。
蓄電池は電気の使用量そのものを減らす装置ではなく、電気を使う時間をずらす装置です。そのため電気代が下がるのは、主に契約電力で決まる基本料金の部分になります。
高圧受電の請求書は、大きく次の3つでできています。
蓄電池が動かせるのはこのうち基本料金です。夜間に充電してピークの時間帯に放電すれば、買う瞬間の電力が下がり、最大デマンド値が抑えられます。
一方で、施設が使う電気の総量(kWh)は減りません。充放電のたびに損失が生じるため、買う量はむしろわずかに増えます。電力量料金が下がるとすれば、単価の安い時間帯に買い替えた差額です。再エネ賦課金は使用量に法定単価を掛けたものなので、蓄電池では動きません。
蓄電池の容量は、削りたいピークの高さ(kW)ではなく、目標ラインを超えている時間帯の電力量の合計(kWh)で決まります。同じ100kW分のピークでも、超過が30分で収まるなら50kWh、2時間続くなら200kWhが必要で、容量は4倍変わります。
必要な容量は、次の手順で見当がつきます。
蓄電池には「出力(kW)」と「容量(kWh)」の2つの数字があり、見積書でも別の項目です。出力が足りなければピークを削りきれず、容量が足りなければ途中で空になります。一方だけでは契約電力は下がりません。
さらに、放電できる範囲は全容量の一部に限られ、年数が経つと容量そのものも落ちます。一般に、リン酸鉄系のリチウムイオン電池では、容量が初期の80%まで低下するまでの充放電回数は2,000〜7,000回程度とされています。契約期間の終盤でも足りる容量で見積もることが大切です。
契約電力は直近12か月で最も高かった30分の実績で決まるため、蓄電池が1度でも反応できない日があると、その30分が1年間の基本料金を決めてしまいます。効果を左右するのは、平均的な日の性能ではなく、最も条件の悪い日に確実に動けるかどうかです。
取りこぼしが起きやすいのは、次の場面です。
そのため蓄電池を入れる場合でも、上限に近づいたときに設備の運転を自動で調整する仕組みは別に必要です。蓄電池は供給を足す手当て、制御は需要を抑える手当てで、役割が違います。
ピークの形が違えば、必要な設備も変わります。30分デマンドデータを1年分並べると、施設はおおむね次の3つに分かれます。
自施設がどれに当たるかは、カタログでは分かりません。判断の材料は実測データだけです。
見積もりは機器・工事・制御盤・保守がひとまとめのことが多く、そのままでは他の提案と並べられません。総額を容量(kWh)で割ると比較できます。一般に、業務・産業用の蓄電システムは工事費を含めて1kWhあたり10万〜15万円程度が目安とされています。この幅から外れる場合は、どの費用が別途なのかを確認してください。
産業用の蓄電池は重量があり、屋上や中間階なら床の耐荷重の確認が要ります。屋外でも、受変電設備から離れるほどケーブルと基礎の費用がかさみます。消防への届出や離隔距離も関わるため、現地を見ないと確定しません。
実際に効くのは、保証年数ではなく「何年後に初期容量の何%を保証するか」です。ここが低いと、契約期間の後半でピークを削りきれなくなることがあります。導入時の削減額が続く前提で回収年数を組んでいるなら、保証の中身と合っているかを確認してください。
蓄電池を高圧の受電設備側につなぐ工事には、電気工事士の資格が必要です。販売と施工が分かれている場合は、工事の範囲と責任の所在を契約前に確認してください。当社では、電気工事士資格を持つ自社スタッフが施工を担当します。
蓄電池の容量を決めるには、どのみち30分デマンドデータが必要です。同じデータがあれば、設備を増やさずに制御だけで下げられる幅も分かります。当社が扱う省エネシステムは初期費用0円で、削減できた電気料金の範囲内でお支払いいただく形です。年間の削減額は施設の規模により70万円〜720万円が目安です。
太陽光がなくても、契約電力を下げる目的であれば成立します。夜間に充電してピークの時間帯に放電する使い方になり、削減の原資は基本料金です。ただし電力量料金の側で得られる差額は小さくなります。
兼ねられますが、設計が要ります。ピークカットで放電した直後は残量が少なく、その時間帯に停電が起きると使える電力が限られます。非常時に確保したい容量を先に決め、残りをピークカットに回してください。
併用が前提と考えたほうが安全です。制御で山そのものを低くしておくと、必要な蓄電容量が小さくなり、投資額も抑えられます。
毎月の最大デマンド値を記録し、目標ラインを超えた30分がなかったかを見てください。超えた日があれば、そのとき蓄電池が放電していたか、残量が足りていたかを確認します。
蓄電池で下がるのは基本料金であり、使う電気の量は減りません。必要な容量は、ピークの高さではなく超過している面積で決まります。そして1年のうち1回でも取りこぼせば、その30分が1年間の基本料金を決めます。
判断の材料は、いずれも直近12か月の30分デマンドデータです。これを手元に用意すれば、蓄電池が要る施設なのか制御で足りる施設なのかは、見積書を並べる前に見当がつきます。当社では電気料金の明細から、年間の削減見込み額とCO2削減量を無料で試算しています。