契約している電力会社やアグリゲーターから、デマンドレスポンスへの参加を打診された——そんな状況でこのページにたどり着いた方が多いのではないでしょうか。「電気を控えるだけで報酬が入る」と説明されたものの、実際に施設の中で何が起きるのか、いくら入るのか、応じられなかったらどうなるのかまでは分からない。そのまま判断を保留している担当者は少なくありません。
制度そのものの解説は、調べればいくらでも出てきます。下げDRと上げDR、電気料金型とインセンティブ型、アグリゲーター経由の入札——用語の意味はすぐに分かります。分かりにくいのはその先、「参加すると毎月の請求書はどう変わるのか」という一点です。
この記事では、年間の電気料金が2,000万円を超える規模の施設を前提に、参加の条件と報酬・ペナルティの考え方、参加しても動かない費目までを整理します。
デマンドレスポンス(DR)は、電力の需給が逼迫したとき、あるいは逆に供給が余ったときに、需要側が使用量を調整して需給バランスを保つ取り組みです。施設から見れば、あらかじめ契約したうえで、指令が届いた時間帯だけ電力の使い方を変える形になります。
常時なにかをするわけではありません。指令が出るのは年に数回から十数回程度で、1回あたりの継続時間も数時間です。ここが、毎日働く省エネ設備との決定的な違いです。
供給が足りない時間帯に使用量を減らすのが下げDR、供給が余る時間帯にあえて使用量を増やすのが上げDRです。太陽光の発電量が需要を上回る春や秋の昼間には、上げDRの要請が出ることもあります。施設に打診されるのは、多くの場合、夏と冬の夕方に出る下げDRです。
電気料金型は、ピーク時間帯の単価を高くして需要を抑える方式です。抑えられなければ電気料金がそのまま高くなります。インセンティブ型は、減らした量に応じて報酬が支払われる方式で、大規模施設に打診されるのはこちらが中心です。
デマンドレスポンスの報酬は、指令に応じて需要を動かした日に対する対価です。基本料金の根拠になっている契約電力とは別の勘定であり、参加しただけで毎月の基本料金が下がるわけではありません。ここを取り違えたまま導入すると、期待していた効果と実際の請求書が食い違います。
高圧受電の契約電力は実量制で決まります。30分ごとの平均使用電力(デマンド値)を計測し、直近12か月で最も高かった値が、そのまま今後の契約電力になります。毎月の基本料金を決めているのは、1年のうちたった30分の実績です。
一方、デマンドレスポンスの指令が出るのは年に数回です。その日に需要を落としても、指令が出なかった別の月にそれより高い山が立っていれば、契約電力は動きません。報酬は入ったのに基本料金は前年と同じ、という結果が起こりえます。
逆に言えば、日常的にピークを抑える仕組みを先に入れておけば、基本料金そのものが下がりやすくなり、指令の日にはさらに需要を落として報酬も受け取れます。二者択一ではなく順番の問題です。
参加の条件は、高圧以上で受電していること、指令の時間帯に止めるか動かせる設備があること、30分ごとの使用電力を計測できること、アグリゲーターまたは小売電気事業者と契約していることの4つです。どれか1つでも欠けると、話が進んでも実効性の確認で止まります。
見落とされやすいのが2つ目です。照明をすべて切り替えていても、指令の時間帯に落とせる量はわずかです。まとまった量を動かせるのは、たいていの施設で空調・熱源・蓄熱槽で、工場では一部の生産設備も対象になります。非常用以外の自家発電設備があれば、それも使えます。ここが動かせない施設では、契約はできても求められる削減量に届かないことがあります。
報酬額は参加前に確定しません。減らせる量と、実際に出た指令の回数で決まるため、契約時点で分かるのは単価の考え方と算定式だけです。「おおよそこのくらい」という口頭の説明のまま契約に進まないでください。
指令の回数は、一般に単年度で最大12回程度を上限とするプログラムが多いとされていますが、上限も算定方法もプログラムごとに異なります。金額を知るには、事前に確認した削減量を算定式に当てはめた試算を、書面で出してもらうのが確実です。
ペナルティも同じです。目標量に届かなかったときに報酬が減額されるだけの契約もあれば、違約金が設定されている契約もあります。確認しておきたいのは次の3点です。
参加を決める前に、施設側で押さえておくべきことが3つあります。いずれも日々の運用に直結する話です。
手動で対応する前提の契約だと、指令が届くたびに担当者が現場で操作することになります。指令は夜間や休日に出る可能性もあります。設備側で自動的に応じられる仕組みがあるかどうかで、運用の負担はまったく変わります。
デマンド制御装置がすでに入っている施設では、指令に応じる操作と既存の制御が同時に動くことがあります。どちらが優先されるのか、想定外の遮断が起きないかを、装置の仕様を把握している事業者に確認してください。
計測装置や制御盤の追加が必要になる場合があります。受変電設備に手を入れる工事には電気工事士の資格が必要です。当社では電気工事士資格を持つ自社スタッフが施工を担当し、外部への委託は行っていません。見積もりを比べるときは、施工を自社で行うのかを確認しておくと、責任の所在がはっきりします。
インセンティブ型では単価は変わりません。減らした量に応じた報酬が、電気料金とは別に支払われます。電気料金型を選んだ場合は、ピーク時間帯の単価が高く設定されます。
止める必要はありません。多くの施設では、空調や熱源の出力を一時的に落として対応します。止められない設備がある前提で、どこから減らすかを事前に決めておく形になります。
契約期間の途中で解約できるかどうかは、プログラムによって異なります。年度単位の契約が一般的なため、解約の可否と時期、違約金の有無を契約書で確認してください。
指令に応じて減らした電力量の分は、その分の排出量が減ります。ただし年に数回の対応のため、年間の排出量全体に占める割合は限られます。報告書に載せる規模を目指すなら、日常的に使用量とピークを下げる施策と組み合わせる必要があります。
デマンドレスポンスは、指令が来た日だけ需要を動かして報酬を受け取る仕組みです。参加そのものに費用がかからないプログラムも多く、条件が合う施設であれば取り組む価値があります。
ただし、基本料金を決めているのは直近12か月の最大デマンドであり、年に数回の指令対応では動きません。毎月の請求額そのものを下げたいのであれば、日常的にピークを抑える仕組みを先に入れるほうが、順序として自然です。その土台があれば、指令が来た日に落とせる量も増えます。
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