電気代の請求書を見て「また上がっている」と感じても、原因が燃料価格の高騰なのか、自社の使い方の問題なのか、判断がつきにくいという方は多いのではないでしょうか。ニュースで報じられる値上げの背景と、自社の請求書の中身が、なかなか結びつかないためです。
この記事では、電気代が高くなる原因を「施設側では動かせないもの」と「施設側で動かせるもの」に分けて整理し、後者の代表である契約電力の仕組みと、見落とされがちな注意点を解説します。
法人の電気代が高くなる原因は、燃料費調整額や再エネ賦課金といった「施設側では動かせない外的要因」と、契約電力(デマンド値)という「施設側で動かせる要因」の2種類に分けられます。ニュースで語られる値上げの話は、ほとんどが前者です。
燃料価格の変動を反映する燃料費調整額や、再生可能エネルギーの普及費用を賄う再エネ賦課金は、電力会社や国のエネルギー政策によって決まる項目です。円安や原油価格の変動も同様に、一施設の努力で変えられるものではありません。これらは「電気代が高い」というニュースの主役ですが、施設側にできることはほとんどありません。
高圧受電の施設で唯一、施設側の工夫で下げられるのが契約電力です。契約電力は基本料金の根拠となる数値で、電力会社が一方的に決めるものではなく、施設側の電力の使い方によって変動します。外的要因に振り回されるだけでなく、自社で動かせる部分があると知っておくことが、対策の第一歩になります。
契約電力は、直近12か月のうち最も使用電力が高かった30分間の実績で自動的に決まり、以後1年間はその水準が基本料金の基準として固定されます。一時的に電力使用が増えた月があると、翌月以降に使用量が元に戻っても、基本料金は下がりません。
この仕組みを知らないまま請求書だけを見ていると、「使用量は減っているのに基本料金が変わらない」という状態になり、原因が分からず放置されがちです。
契約電力が上がる典型的な原因は、複数の設備が偶然同じ時間帯に重なって稼働することです。空調の立ち上げ、給湯設備の稼働、生産ラインの始動などが同じ30分に重なると、その瞬間だけ使用電力が跳ね上がり、それが1年分の基準になってしまいます。
日常の運用では、どの設備がいつ稼働しているかを個別に把握していないことが多く、ピークが発生した原因が特定できないまま契約電力だけが上がっているケースが少なくありません。季節の変わり目や繁忙期など、普段と異なる稼働パターンが重なるタイミングは特に注意が必要です。
電力会社を切り替えると電力量料金の単価は変わりますが、契約電力の水準そのものは引き継がれるため、基本料金は下がりません。単価交渉と契約電力の見直しは、別々の打ち手として両方進める必要があります。
電気代が高いと感じて電力会社の切り替えだけを行い、それでも下がらなかったという声を聞くことがありますが、多くの場合は契約電力の部分に手をつけていないことが理由です。
契約電力の見直しによる削減額は、施設の年間電気料金の規模によって幅があります。
| 施設 | 年間電気料金 | 削減額の目安 | CO2削減量 |
|---|---|---|---|
| 介護施設・小規模病院 | 1,200万円前後 | 年 70〜120万円 | 約15〜25t |
| オフィスビル・市役所 | 2,000〜3,000万円 | 年 150〜300万円 | 約30〜60t |
| 総合病院・ホテル | 3,000〜5,000万円 | 年 250〜450万円 | 約50〜90t |
| 工場・大型商業施設 | 5,000万円以上 | 年 400〜720万円 | 約80〜150t |
契約電力の見直しを検討する際は、次の点を事前に確認しておくと、話がスムーズに進みます。
使用量(電力量料金)と契約電力(基本料金)は別々に決まるためです。使用量を減らしても、過去のピークで固定された契約電力はそのままなので、基本料金部分は変わりません。
燃料費調整額の算定方法は電力会社によって多少異なりますが、燃料価格の変動という根本要因は共通しているため、切り替えだけで大きく解消するものではありません。
電気料金の明細に「契約電力」または「契約kW」として記載されています。数値の推移は電力会社の web明細や検針票からさかのぼって確認できます。
直近12か月の最大値が基準になるため、対策を始めてから反映されるまでには一定の期間が必要です。まずは現在の水準と、ピークの原因を把握することが最初のステップです。
法人の電気代が高い原因には、燃料費調整額のように施設側で動かせない外的要因と、契約電力のように施設側で動かせる要因があります。契約電力は一度上がると1年間下がらない性質を持つため、気づかないうちに基本料金が高止まりしているケースが少なくありません。まずは自社の契約電力がいつ、なぜその水準になったのかを確認することが、対策の出発点になります。