電力使用量の見える化を導入すれば電気代が下がる——そう聞いて計測システムを入れたものの、グラフを眺めるだけで終わっている。あるいは、導入を決める前に本当に効果があるのかを確かめたい。この記事は、そうした状況にある施設管理のご担当者に向けて書いています。
先に結論を書きます。見える化は削減の入口としては正しい選択ですが、計測しただけで料金が下がることはありません。ここを取り違えると、費用をかけて計測環境を整えたのに請求書が変わらない、という結果になります。
以下では、見える化で本当に得られるものは何か、データのどこを見れば削減余地を判断できるのかを、年間電気料金2,000万円以上の大規模施設を前提に整理します。
見える化は「測る」技術であって、「減らす」技術ではありません。体温計が熱を下げないのと同じで、料金を動かすのは計測のあとに取る行動です。
では意味がないのかというと、そうではありません。価値は、削減の打ち手を「勘」から「根拠」に変えられる点にあります。計測がなければ、照明の交換や設定温度の変更といった一般的な対策を、自分の施設で効くか分からないまま試すことになります。
もうひとつ重要なのが、高圧受電(契約電力50kW以上)の施設では、電気料金が性質の違う2つに分かれている点です。使った電力量に応じて増減する電力量料金と、契約電力で決まる基本料金です。基本料金は使用量を減らしても自動的には下がりません。契約電力は申告制ではなく、直近12か月のうち最も使用電力が高かった30分の実績(デマンド値)で決まるからです。
つまり見える化の効果は、無駄な使用量が見つかることだけではありません。基本料金を押し上げている一瞬がいつ、なぜ起きているのかを特定できることのほうが、金額としては大きく効きます。
最大デマンド値、その値が出た日時、そして契約電力に迫る山が年に何回出ているか。この3つを押さえれば、削減余地があるかどうかはおおむね判断できます。グラフを端から眺める必要はありません。
これが今の基本料金の根拠です。電気料金の明細にも記載されていますが、見える化のデータなら、その値がどの月に出たかまで一目で分かります。契約電力と実際の最大デマンド値に開きがあるなら、契約内容そのものに見直し余地があります。
次に、その30分に何が動いていたかを突き止めます。始業直後の空調の一斉立ち上げ、給湯設備と厨房設備の重なり、点検で普段止めている機器を動かした——理由は施設ごとに違います。この特定ができていない状態で節電に着手すると、料金に効かない場所を削ることになります。
いちばん見落とされる視点です。同じ「最大デマンド値が高い」でも、その水準の山が年1回なのか毎日なのかで、打つべき手はまったく変わります。年に数回しか出ない山なら、その数回を抑えるだけで契約電力が下がる可能性があります。毎日出ているなら、運用の工夫ではなく負荷そのものの制御が必要になります。
ピークが「毎日型」「季節型」「突発型」のどれに当てはまるかで、次に投じるべき手間と費用の見当がつきます。
始業前後や昼過ぎなど、決まった時間帯に山が出る型です。設備が本来の使い方をした結果なので、運用ルールで抑えようとすると現場に無理が出ます。空調や給湯といった大きな負荷の稼働タイミングを、機器側で自動的にずらす仕組みが向いています。
真夏と真冬に山が寄る型です。年間を通せば余裕があるのに、数か月の負荷が1年分の基本料金を決めています。ピークの時期が事前に分かるため、その期間に絞って制御を効かせればよく、投資対効果が読みやすいのが特徴です。
普段は余裕があるのに、点検やイベント、設備の同時立ち上げなど年に数回の出来事で山が出る型です。その数回のために1年分の基本料金を高い水準で払い続けている、いちばんもったいない状態です。原因をデータから特定し、その瞬間だけ負荷を分散できれば、契約電力を下げられる可能性があります。
見える化と運用改善で削れるのは使用量、つまり電力量料金の側です。基本料金を下げるには、ピークの瞬間そのものを抑える必要があります。ここを分けて考えないと、削減の伸びしろを見誤ります。
使っていない場所の照明を消す、退勤後に機器を落とすといった運用改善は電力量料金に効きます。一方、基本料金は最も高かった30分だけで決まるため、他の時間をどれだけ節約しても、その30分が下がらない限り動きません。使用量を減らしたのに請求額の下がり方が思ったほどではなかった、という声の多くは、この構造から来ています。
見える化の直後は、現場の関心が高まって使用量が目に見えて下がることがあります。ただし人の努力に依存した削減は、担当者の異動や繁忙期を経て元の水準に近づきます。続けられる部分と続かない部分を早い段階で切り分け、続かない部分は自動的に効く仕組みに置き換えておくことが、投資を無駄にしない条件です。
見える化の導入、あるいはその次の制御まで進めるかを判断する前に、次の点を確認しておくと判断がぶれません。
ピークの型を見極めるには、季節をまたいだデータがあるほど確実です。ただし最大デマンド値は電気料金の明細からも確認できるため、計測を始める前でも一次判断は可能です。
既存の計測環境があるなら、そのデータを使って削減余地を判断できます。現地調査の際に、既存システムの構成もあわせて確認します。
設定温度を緩めたり稼働を止めたりするのではなく、複数の設備が同時に立ち上がる瞬間をずらす方式のため、施設の使い方を変えずに済むことがほとんどです。影響が出そうな設備は、現地調査の段階で対象から外すか制御条件を調整します。
電力使用量の見える化に効果があるかという問いへの答えは、「見える化そのものに削減効果はないが、打ち手を正しく選ぶには不可欠」です。最大デマンド値・その発生日時・山の回数という3つの数字まで読み込み、ピークが毎日型・季節型・突発型のどれかを見極めてください。
当社は約3,500社・12,000施設への導入実績と20年以上の稼働実績をもとに、特許を取得した制御方式で契約電力のピークを抑える仕組みをご提供しています。施設の規模にもよりますが、年間の電気代で70万円〜720万円の削減実績があり、CO2排出量では年間数十トンの削減につながっています。電気料金の明細をご用意いただければ、削減の見込み額を無料で試算いたします。