省エネ法の定期報告の担当になり、まず「自社は本当に対象なのか」を確かめようとして調べ始めた——そういう段階の方が多いはずです。
どの解説にも「原油換算で年間1,500kL以上」と書かれていますが、自社の数字がそこに届いているのかは、電気料金の明細を眺めているだけでは分かりません。対象と分かったあとに何が起きるのかも、あわせて確認しておきたいところです。
この記事では、対象かどうかを自社の数字で判定する手順と、対象になったあとに求められることを順に整理します。報告書を出すこと自体より、そのあとに続く「エネルギー消費原単位を年1%改善する」という部分でつまずく施設が多いため、そこにも踏み込みます。
省エネ法の報告義務の対象になるのは、会社全体で1年間に使ったエネルギーが、原油換算で1,500kL以上になった事業者です。この基準に達すると「特定事業者」として指定され、毎年度の定期報告書と中長期計画書の提出義務が生じます。
判定は拠点ごとではなく、本社ビル・支店・工場・倉庫・店舗まで、その事業者が使ったエネルギーをすべて合算して行います。1か所では小さくても、拠点数が多ければ合計で基準を超えることがあります。電気だけでなく、都市ガス・重油・灯油などの燃料も同じ土俵に乗せます。
資源エネルギー庁が定める換算係数で計算すると、電気の使用量が年間およそ600万kWhを超えたあたりで原油換算1,500kLに達します。係数は、その他の買電で1,000kWhあたり9.76GJ、原油換算は1GJあたり0.0258kLと定められています(昼間・夜間の買電には別の係数)。この2つから逆算した数値です。
年間の電気料金が2,000万円を超える規模の施設なら、燃料を数えるまでもなく電気だけで基準に届いているケースがほとんどです。まずは明細の使用量(kWh)を12か月分足し上げると、当落の見当がつきます。
特定事業者に指定されると、毎年度、エネルギーの使用状況をまとめた定期報告書と中長期計画書を提出することになります。提出期限は毎年7月末日です。
あわせて社内の管理体制の整備も求められます。原油換算1,500kL以上3,000kL未満の工場・事業場は第二種、3,000kL以上は第一種のエネルギー管理指定工場に指定され、規模と業種に応じてエネルギー管理者やエネルギー管理員の選任が必要になります。
罰則も定められています。報告をしなかった、または虚偽の報告をした場合は50万円以下の罰金、エネルギー管理者などを選任しなかった場合は100万円以下の罰金です。ただし実務で重いのは、罰金よりも次に説明する評価のほうです。
省エネ法は、報告することだけでなく、エネルギー消費原単位を中長期的にみて年平均1%以上改善することを努力目標として求めています。原単位とは、エネルギー使用量を、生産量や延床面積といった事業活動の量で割った値です。
難しいのは、分母をこちらの都合で動かせないからです。生産量を落とす、フロアを閉じる、稼働時間を短くする——分母を小さくすれば原単位はかえって悪化します。事業が伸びているときほど、分子を実際に減らさない限り数字は改善しません。
定期報告書を提出した事業者は、S・A・B・Cの4段階に分類されます。5年度間平均で原単位が年1%以上改善している、またはベンチマーク目標を達成していればSクラスとされ、社名が公表されます。
一方、5年度間平均の1%改善が未達で、かつ直近2年連続で原単位が前年度より増加している場合などはBクラス(省エネが停滞している事業者)に区分されます。Bクラスになると報告徴収や立入検査、現地調査の対象になりやすく、対応工数が担当者にのしかかります。検査で判断基準の遵守状況が不十分と判断されればCクラス(要注意事業者)となり、指導などが行われます。つまり省エネ法対応は、5年かけて数字を動かす仕事です。
2023年4月に施行された改正省エネ法では、電気の需要の最適化という考え方が加わりました。定期報告では、電気需要最適化評価原単位に加えてDR(デマンドレスポンス)の実績報告が求められます。
DRには、需給がひっ迫する時間帯に使用電力を抑える「下げDR」と、余剰が出る時間帯に使用を増やす「上げDR」があります。大規模施設が現実的に取り組みやすいのは下げDRです。
注目したいのは、30分ごとの平均使用電力(デマンド値)の山を抑える運用が、報告書の材料としても基本料金を抑える手段としても同じ方向を向いている点です。省エネ法対応のために別の取り組みを起こすより、コスト削減として実施していることを報告に載せられる形に整えるほうが、負担は軽くなります。
原単位の改善を設備更新だけで進めようとすると、予算がついた年にしか動けません。稟議が翌年度送りになるうちに2年連続の悪化が確定してしまう流れは、実際に起こりやすいものです。
設備を入れ替えずに使い方の側を効率化する方法を検討する場合、確認しておきたい点が3つあります。
当社は、特許を取得した制御方式で使用電力のピークを抑えるシステムを提供しています。初期費用0円のスキームに対応し、施工は電気工事士資格を持つ自社スタッフが行います。導入後は、削減できた電気料金と年間数十トン規模のCO2削減量を数値でご報告しています。
対象になる場合があります。判定は事業所単位ではなく事業者全体の合計で行うため、全拠点を足し上げた結果が原油換算1,500kL以上であれば特定事業者に該当します。
電気料金明細に記載されている使用量(kWh)を12か月分合計します。昼間の買電と夜間の買電では換算係数が異なるため、時間帯別の契約をしている場合は区分ごとに集計しておくと計算が正確になります。
省エネ法では、報告をしなかった場合や虚偽の報告をした場合に50万円以下の罰金が定められています。期限に間に合わない見込みが立った時点で、所管の窓口に相談するのが実務的です。
定期報告書には、目標を満たせなかった理由を記載する欄があります。ただし未達が続き、直近2年連続で原単位が増加するなどの条件に当てはまるとクラス分けで不利になります。理由を書いて済ませず、翌年度に効く手を打っておくことが大切です。
省エネ法の報告義務の対象は、事業者全体のエネルギー使用量が原油換算1,500kL以上になった事業者です。判定は合計で行うため、まずは全拠点の電気とガスの使用量を12か月分そろえることから始まります。電気だけなら、年間およそ600万kWhが当落の目安です。
そして対象になったあとに続くのは、原単位を年1%改善し続けるという課題です。分母を動かせない以上、実際にエネルギー使用量を減らす手段を持っているかが、5年後のクラス分けを左右します。削減した結果がそのまま報告の数値になる形に整えておくことをおすすめします。