省エネの設備投資を社内に諮ると、必ず「何年で回収できるのか」を聞かれます。電気代の削減は売上が増えるわけでも人手が減るわけでもないため、判断材料が回収年数に集中しやすいからです。
ところが、この回収年数は計算のしかたひとつで3年にも6年にもなります。式は割り算ひとつと単純なのに、分母に置く「年間削減額」の積み方に決まった作法がないためです。稟議が差し戻される理由も、たいていは計算の誤りではなく、前提が書かれていないことにあります。
この記事では、年間の電気料金が2,000万円以上の高圧受電施設を想定し、分子と分母に何を入れるか、どこで数字がずれるかを整理します。
投資回収期間は、初期投資額を年間の削減額で割った年数です。投資額が年間削減額の3倍なら3年、5倍なら5年になります。単純回収年数と呼ばれる指標で、金利や設備の寿命までは反映しません。それでも最初に使われるのは、前提を共有していない相手にも一目で伝わるからです。
省エネ設備の投資回収期間は、一般に5〜7年程度になるケースも珍しくないとされています。判断のラインとしては、3年以内なら積極的に進められる、3〜5年なら妥当、5年を超えるなら金額以外の要素も含めて総合的に見る、という整理が一般的です。この物差しを持ったうえで、自社の数字を作っていきます。
見積書の合計金額をそのまま分子に置くと、回収年数は実際より短く出ます。電気設備の工事では、機器本体のほかに次の費用が発生します。
導入後に毎年かかる保守・点検費は、分子ではなく分母から差し引きます。年間の削減額が保守費の分だけ目減りするためです。
高圧受電の電気料金は基本料金と電力量料金に分かれており、この二つは削減の理屈も、金額の読みやすさもまったく違います。分けずに「電気代が何%下がる」で積むと、回収年数の信頼性がそこで失われます。
基本料金は、契約電力(kW)に単価を掛け、12か月分を支払う形です。契約電力が下がれば、下がったkW数がそのまま12か月分の削減額になります。使用量が月ごとに増減しても、基本料金の削減額は動きません。稟議に書く数字としては、こちらのほうが根拠を示しやすい種類の金額です。
一方の電力量料金は、実際に使ったkWhに単価を掛けたものです。削減量の見込みは稼働率・気温・生産量に左右されます。前年より下がっていても、その年が涼しかっただけかもしれません。基本料金の削減とは確からしさが違う、という前提で扱ってください。
分母の当たりを付ける材料として、当社が導入した施設での年間削減額の目安を挙げます。年間電気料金2,000〜3,000万円のオフィスビル・市役所で年150〜300万円、3,000〜5,000万円の総合病院・ホテルで年250〜450万円、5,000万円以上の工場・大型商業施設で年400〜720万円です。
削減できるのは使用量(kWh)と契約電力(kW)であって、金額そのものではありません。単価が上がれば同じ削減量でも金額は増え、下がれば減ります。燃料費調整額や再エネ賦課金が動けば、回収年数も一緒に動きます。稟議書には「いつ時点の単価で計算したか」を必ず添えてください。
照明を切り替え、空調の制御を入れ、受変電設備にも手を入れる。それぞれの提案書に書かれた削減額を合計すると、実際より大きな数字になります。照明の消費電力が下がれば発熱も減り、その分だけ空調が担う負荷も減るためです。同じ削減分を、照明の効果としても空調の効果としても数えてしまう状態です。対策を組み合わせるときは、施設全体の使用電力がどこまで下がるかで見積もり直してください。
回収年数が設備の残り寿命を超えていれば、回収しきる前に更新の時期が来ます。導入する設備だけでなく、その効果が乗っている既存設備の残存年数も確認してください。空調機の更新が3年後に控えているなら、そこに載せる制御の投資が3年で回収できるかが分かれ目になります。
初期費用0円で導入する場合、分子にあたる初期投資額がありません。回収年数という指標そのものが成り立たなくなるため、代わりに「毎月の支払いが削減額の範囲内に収まっているか」を見ます。
当社が提供しているのは、導入費用を初期費用0円とし、削減できた電気料金の範囲内でお支払いいただくスキームです。特許を取得した制御方式にもとづく設備を、電気工事士資格を持つ自社スタッフが施工します(外部委託なし)。導入実績は約3,500社・12,000施設、稼働実績は20年以上です。
このかたちで検討する場合、稟議で説明すべき内容は次のように変わります。
投資額がないぶん判断は楽に見えますが、確認すべき項目が消えるわけではありません。なお、補助金を使って自己所有で導入する道もあります。どちらが有利かは資産計上の方針や予算の付き方で変わるため、両方の見積もりを並べて比べるのが確実です。
回収年数が出たら、その数字がどんな前提の上に立っているかを添えてください。前提のない試算は、単価が動いた瞬間に説得力を失います。あわせて施工体制もご確認ください。提案元が自社で施工するのか外部に委託するのか、有資格者が担当するのかは、契約前に聞いておいて損のない項目です。
当社では、導入後の削減額とCO2削減量を数値で報告しています。試算が正しかったかをあとから確かめられる状態にしておくと、次の投資判断も社内で通しやすくなります。
会社の方針によりますが、3年以内なら積極的に進められる、3〜5年なら妥当、5年超は総合判断、という整理が一般的です。省エネ投資は5〜7年程度になるケースも珍しくないとされ、その場合はCO2削減量や法対応の必要性も判断材料に加わります。
金額が大きく、回収に5年以上かかる案件では検討する価値があります。ただし割引率の置き方で結果が変わるため、単純回収年数と並べて示すのが実務的です。
同じ削減量でも金額が増えるため、計算上の回収年数は短くなります。ただし削減対象でない部分の料金も同時に上がるため、施設全体の支出としては増えます。
契約の形態によって扱いが変わります。設備の所有権が誰にあるか、契約期間の途中で解約できるかといった条件で判断が分かれるため、契約書の条文を経理部門と一緒にご確認いただくのが確実です。
電気代削減の投資回収期間は、初期投資額を年間削減額で割った年数です。式は単純ですが、分子には工事費や撤去費を含め、分母は基本料金の削減と電力量料金の削減に分けて積む必要があります。回収年数がずれる原因の多くは、単価を固定していること、複数の対策の効果を足し算していること、設備の残存年数を見ていないことに集約されます。
初期費用0円のスキームを選ぶ場合は、回収年数の代わりに「支払いが削減額の範囲に収まるか」「契約終了後にどうなるか」を確認してください。当社では、電気料金の明細をお預かりした段階で年間の削減見込み額とCO2削減量を算出しています。稟議に出す前の当たりを付ける材料としてもご利用いただけます。