空調の設定温度を1℃上げれば10%の省エネになる——省エネの担当になると、まずこの数字に行き当たります。全館のリモコンを回って設定を28℃に揃え、掲示も出した。それでも翌月の請求書は、思ったほど変わっていない。
この結果は珍しいものではありません。「1℃で約10%」という目安が誤りなのではなく、その10%が何にかかる10%なのかが、説明では省略されがちだからです。年間の電気料金が2,000万円を超える施設では、この省略が大きな見込み違いにつながります。
この記事では、設定温度の緩和が電気料金のどこにどれだけ効くのかを、段階を追って整理します。
1℃の緩和で約10%というのは、空調機が使う電力に対する削減率であり、施設全体の電気料金に対する削減率ではありません。請求額に換算するには、空調が施設全体の電力に占める割合を掛けたうえで、料金の内訳に照らし直す必要があります。
まず元の数字を確認します。一般に、設定温度を1℃緩和した場合の削減効果は冷房で約13%、暖房で約10%とされています。業務用・産業用の設備を対象とした環境省の資料でも、1℃の緩和で約10%、2℃以上ではまとめて15%という見込み値が使われています。いずれも対象は空調設備の消費エネルギーです。
ここに割合を掛けます。一般に、事務所ビルの夏季の消費電力は空調が約48%を占めるとされています。空調の消費電力が10%減っても、施設全体の電力使用量で見れば約4.8%にとどまります。
さらにもう一段あります。高圧受電の電気料金は電力量料金だけで決まるわけではなく、契約電力で決まる基本料金と、使用量に比例する再生可能エネルギー発電促進賦課金が加わります。使用量が4.8%減っても、基本料金が動かなければ請求額の減り方はそれより小さくなります。
基本料金を決めるのは契約電力で、契約電力は直近12か月のうち最も高かった30分の平均使用電力で決まります。設定温度の緩和は「使った量」を削る打ち手であり、この一点の山を狙って下げる打ち手ではありません。
デマンド値の最大は、多くの施設で最も暑い日の午前中から昼過ぎに記録されます。夜間に熱を溜め込んだ建物を目標の室温まで引き下げるため、空調機がほぼ全力で運転している時間帯です。
設定が28℃でも、室温がそれを大きく上回っていれば、機器に「全力で冷やす」以外の選択肢はありません。設定が1℃高い分だけ全力運転の時間は短くなりますが、その最中の使用電力の高さは変わりません。契約電力を決めるのは高さであって、長さではないのです。
基本料金を動かすには、その30分に何台が同時に立ち上がっているかを制御する必要があります。設定温度の掲示では、ここに手が届きません。
設定温度の緩和が効かなかったという報告の多くは、次の4つのどれかに当てはまります。効果を測る前に、自分の施設がどれに当たるかを確認しておくと無駄が省けます。
とくに4は、効果が出ていないのではなく、緩和がそもそも実施されていない状態です。設定温度は人が変えられる値であり、掲示や通達だけでは維持されません。
室温を緩められない施設では、設定温度以外の要素——立ち上げの重なり方、外気の取り込み量、機器ごとの運転の配分——を動かすことになります。室温を変えずに消費電力を下げる余地は、ここに残っています。
事務所については、事務所衛生基準規則で室の気温を18℃以上28℃以下とする努力義務が定められています(2022年4月1日から、下限が17℃から18℃に改められました)。この範囲内であれば、設定を緩める余地は制度上あります。
一方、施設の性格そのものが室温を縛る場合もあります。用途によって緩められる余地は大きく異なり、「まず28℃に」が実行できない施設は少なくありません。
設定温度に手をつけられない場合でも、打ち手は残っています。いずれも室温を犠牲にせず、使い方の側を変えるものです。
3つ目が、当社が特許を取得した制御方式で行っている部分です。専用システムが30分ごとの使用電力を監視し、山が立ちそうな局面でのみ機器の運転を配分します。室温の設定値は触りません。導入実績は約3,500社・12,000施設、稼働実績は20年以上で、年間の電気代削減額は施設の規模に応じて70万円〜720万円、CO2排出量では年間数十トンの削減が見込めます。初期費用は0円で、削減できた電気料金の範囲内でお支払いいただく形です。
制御の導入に進む前に、次の3点を手元で確かめておくと話が具体的になります。
28℃は環境省が推奨する室温の目安であり、リモコンの設定値の基準ではありません。事務所については事務所衛生基準規則で18℃以上28℃以下とする努力義務があり、実際の室温がその範囲に収まるよう調整するのが本来の考え方です。
単純に2倍にはなりません。業務用・産業用を対象とした環境省の資料では、2℃以上の緩和はまとめて15%という見込み値が使われています。幅を広げるほど1℃あたりの効き目は小さくなり、室内からの不満は大きくなります。
電気料金明細の電力量料金と基本料金を分けて見比べてください。あわせて、外気温の条件が近い期間どうしで比較しないと、緩和の効果と気候の差が混ざってしまいます。
更新時期を過ぎた設備があれば更新が有力ですが、相応の初期費用と機器を止める期間が必要です。制御は既存の設備を残したまま導入でき、初期費用0円で始められます。設備の残存年数と予算の見通しで判断が分かれます。
「設定温度1℃で約10%」は、空調機の消費電力に対する目安です。施設全体の電力使用量に直すと約4.8%になり、基本料金が動かなければ請求額の減り方はさらに小さくなります。掲示を出しても請求額が変わらなかったのは、この換算が省かれていたためです。
電気料金のもう一方の柱である基本料金は、設定温度ではなく最も高かった30分の使用電力で決まります。室温を緩められない施設ほど、この一点に的を絞った打ち手が現実的です。お手元の明細をご用意いただければ、基本料金をどこまで下げられるかを無料で試算します。