空調機の入れ替え見積もりが手元にあるが、金額が大きく、稟議に上げる前にもう一度考え直したい。設備をご担当の方から、そうしたご相談をいただくことがあります。
調べていくうちに「空調は制御でも省エネできる」という情報に行き当たり、そこで手が止まります。更新と制御のどちらを選べばよいのか。両方必要なのか。片方で足りるなら、どちらが先か。
この記事では、年間の電気料金が2,000万円以上の大規模施設を想定し、この判断を3つの数字で切り分ける方法を整理します。先に結論を書くと、更新と制御は競合する選択肢ではありません。効かせる先が違う打ち手であり、判断すべきは「どちらか」ではなく「どちらを先に置くか」です。
空調機の更新は主に電力量料金に効き、制御は基本料金と電力量料金の両方に効きます。同じ「空調の省エネ」でも、請求書のどこが動くかが違います。
高圧受電の請求額は、大きく基本料金と電力量料金に分かれます。基本料金は契約電力で決まり、その契約電力は、直近12か月のうち最も高かった30分間の平均使用電力で決まります。電力量料金は、実際に使った電力量に単価を掛けたものです。
高効率の機種に入れ替えると、同じ冷房能力を出すための消費電力が下がり、使った電力量そのものが減るため、電力量料金が下がります。ただし、朝の立ち上げで全台が一斉に動く構図が変わらなければ、30分の山の形はそのまま残ります。契約電力が変わらなければ、基本料金は1年間そのままです。
一方の制御は、30分という枠の中で運転を融通し、山の頂だけを削ります。契約電力が下がれば、基本料金は12か月にわたって下がり続けます。抑えた分だけ運転時間も減るため、電力量料金にも効きます。
一般に、事務所ビルでは空調が消費電力の約48%を占めるとされています(資源エネルギー庁の推計)。空調はどちらの打ち手でも主戦場ですが、届く先が違います。
どちらを先に置くかは、電気料金の明細から読み取れる3つの数字で決められます。
12か月分の明細から基本料金だけを合計し、年間の請求総額で割ります。この比率が3割を超えていれば、ピークを抑える打ち手の効き代が大きい施設です。更新だけでは、この3割の部分はほとんど動きません。
逆に、基本料金の比率が低く、電力量料金が請求の大半を占めている施設では、使用量そのものを減らす更新側の打ち手が主役になります。
明細に載っている月ごとの最大需要電力を、12か月分並べます。突出して高い月が1つか2つしかなければ、その月の山を削るだけで契約電力が下がります。
12か月がほぼ横並びで高い場合は、山を削る余地が限られます。常時流れている電力そのものを下げる必要があり、機器の効率が問題になります。
業務用空調の法定耐用年数は、冷凍機の出力が22kW以下で13年、22kWを超えると15年です。実際の寿命は一般に10〜15年、補修部品の保有期間は製造終了からおよそ9〜10年とされています。設置から10年を超えた機器が多い施設では、更新の検討自体は避けられません。
あわせて確認したいのが、停止を伴う工事の窓が取れるかどうかです。空調機の入れ替えは、対象の系統を止めて行います。病院・介護施設・宿泊施設・24時間稼働の工場では、この窓を確保すること自体が最大の制約になります。
設置から10年を超えた機器が多く、12か月の使用量が通年で高い施設は更新が先です。機器が比較的新しく、特定の月だけピークが突出している施設は制御が先です。
両者の違いを、5つの観点で並べます。
費用の出方も違います。業務用空調機の入れ替え費用は、一般に1台あたり数十万円から、能力の大きな機種では100万円を超えるとされています。大規模施設では対象台数がまとまるため、更新は資本的支出として一度に計上されます。
制御側は、当社の場合は初期費用0円です。削減できた電気料金の範囲内でお支払いいただくスキームのため、設備投資の枠を使わずに始められます。
更新と制御は二者択一ではなく、「制御を先に入れて、更新は機器の寿命に合わせる」順番に落ち着く施設が多くあります。
理由は3つあります。1つめは、時期を選べるかどうかの違いです。更新の時期は機器の寿命という外部の事情で決まりますが、制御は今の機器のままで始められます。更新までの数年間、基本料金の削減を先に積み上げられます。
2つめは、更新の精度が上がることです。制御を入れると、30分ごとの使用電力が記録として残ります。実際の負荷の出方が分かるため、更新時の機器容量を実測にもとづいて決められます。カタログ上の最大負荷から容量を積むと過大になりやすく、過大な機器は低負荷での効率が落ちます。
3つめは、更新後も制御が働き続けることです。制御は空調機の外側から運転を調整する仕組みのため、機器を入れ替えても引き継げます。更新で電力量料金が下がり、制御で基本料金が下がるという形で、効く先が重ならずに残ります。
どちらを進める場合でも、見積もりを受け取る前に確認したい点があります。
設定温度を緩めるのではなく、30分の枠の中で運転のタイミングをずらす仕組みです。室温の変動を許容できる範囲は、現地調査の段階で施設ごとに設定します。手術室やサーバー室のように変動を許容できない系統は、対象から外して運用します。
できる場合が多くあります。空調機の内部制御ではなく、外側から電力の流れを見て運転を調整する方式のためです。ただし、対象範囲は系統の分かれ方によって変わるため、現地調査で確認します。
あります。高効率機に入れ替えても、複数台が同じ時刻に立ち上がる構図が残っていれば、30分のピークは生まれます。基本料金の比率が3割を超えているなら、更新済みの施設でも確認する価値があります。
可能ですが、順番を決めておくことをおすすめします。同時に着手すると、どちらの効果で請求額が下がったのかを切り分けられなくなります。制御を先に入れて基本料金の変化を確認してから更新に進むと、更新の効果も測りやすくなります。
空調の更新と制御は、下がる料金項目が違う打ち手です。更新は電力量料金に、制御は基本料金と電力量料金の両方に効きます。
どちらを先に置くかは、年間請求額に占める基本料金の比率、12か月の最大需要電力の並び、機器の残存年数と工事の窓という3つで判断できます。基本料金の比率が3割を超え、突出した月が1つか2つに限られているなら、制御を先に置く余地があります。
当社は、初期費用0円で導入いただける省エネシステムを、約3,500社・12,000施設に提供してきました。電気料金の明細をご用意いただければ、お使いの施設で年間いくら下がる見込みか、CO2削減量とあわせて無料で試算いたします。