毎月届く電気料金の明細を、請求金額と使用量だけ確認してファイルに綴じている。大規模な施設ほど、そうした運用になりがちです。
ただ、高圧で受電している施設の明細には、その月の電気代がなぜその金額になったのかを説明する数字が、ひととおり載っています。家庭用の検針票と決定的に違うのは、「使った量」以外の要素が請求額を大きく動かしている点です。
この記事では、年間の電気料金が2,000万円以上になるような大規模施設を前提に、明細のどこを見れば削減の余地が分かるのかを、実際に見る順番に沿って整理します。
高圧受電の明細は、請求内訳より先に契約情報欄にある契約電力・最大需要電力・力率の3つを確認します。この3つが基本料金を決めており、請求額のうち施設側の判断で動かせる部分が、ここに集中しているためです。
高圧の明細は、様式こそ電力会社ごとに違いますが、載っている情報はおおむね3つの欄——契約の状態、請求金額の内訳、使用電力量——に分かれています。請求内訳から読み始めると、金額の大小に目を奪われがちです。
契約電力が500kW未満の施設では、直近12か月の最大需要電力のうち最も高い値が、そのまま契約電力になります。実量制と呼ばれる仕組みで、施設側が「この容量で契約したい」と申告して決めるものではありません。
そのため、1年のうちたった一度、30分だけ設備が重なって動いた月があると、その値がその後12か月にわたって基本料金の根拠になり続けます。契約電力欄に心当たりのない高い数字が入っているなら、過去1年のどこかにその山があったということです。
契約電力が500kW以上になると、実績をもとに電力会社と協議して決める協議制に変わります。負荷設備や受電設備の内容も踏まえて決まるため、契約電力欄を見るときは、自施設がどちらの方式なのかを先に確認してください。
最大需要電力(デマンド値)は、30分ごとの平均使用電力のうち、その月で最も高かった値で、契約電力とは別の欄に載っています。今月の値が過去11か月のどの月よりも高ければ、その時点で契約電力が書き換わります。逆に12か月続けて低い状態が保たれれば、契約電力は下がっていきます。明細の中で、施設側の行動が最も直接的に反映される数字がここです。
多くの電力会社の高圧の約款では、1か月の平均力率85%を基準に、1%上回るごとに基本料金が1%割引、下回るごとに1%割増になるのが一般的とされています。力率90%なら5%、95%なら10%、100%なら15%の割引で、逆に80%まで落ちれば5%の割増です。
基本料金は「基本料金単価 × 契約電力 ×(185 − 力率)÷ 100」という式で計算されるのが一般的で、契約電力を下げなくても力率を改善するだけで基本料金が動きます。力率が下がる原因は電動機などで生じる遅れの無効電力で、進相コンデンサの容量不足や劣化、開放されたままの状態が背景にあります。
請求内訳の各項目は、施設側の使い方で動く項目と、単価が外部で決まる項目に分かれます。この区別が付いていないと、下がらないものに対策の時間を使うことになりかねません。項目ごとの性格は次のとおりです。
単価が外部で決まる項目は、使用電力量を減らす以外に下げる手立てがありません。
単月の明細では、契約電力を押し上げているのがどの月か分かりません。12か月分の最大需要電力の欄だけを縦に書き写すと、次の3つが見えてきます。
力率も同じように12か月分を並べます。通年で低いのか特定の季節だけ落ちるのかで、原因の見当が変わるためです。
なお、単価は改定されるため、使用電力量が同じでも請求額は年ごとに変わります。前年同月と比べるときは、金額ではなく使用電力量・最大需要電力・力率という数量の欄で比べてください。金額だけで比べると、単価の改定と施設の変化が混ざってしまいます。
次の4つに当てはまる箇所がないかを確認します。
見積もりや試算を依頼する段階では、次の点を先に押さえておくと話が早く進みます。
契約電力は基本料金の計算に使う値、最大需要電力はその月に記録された30分の最大値です。500kW未満の実量制では、最大需要電力の直近12か月の最大値がそのまま契約電力になるため、両方を並べて確認できるようになっています。
多くのWeb検針票では過去12か月分を閲覧・ダウンロードできますが、保存期間は事業者によって異なります。期限を過ぎた分は再発行の依頼が必要になるため、毎月PDFで保存しておくのが確実です。
高圧受電では通常記載されますが、様式によっては力率割引・割増の金額欄だけが載っていることがあります。その場合は、電力会社に月別の平均力率の開示を依頼できます。
おおよその見当は付きます。契約電力と最大需要電力の差、力率の状態、基本料金の比率から、どこに余地がありそうかを絞り込めます。実際の削減額は、30分ごとのデータと現地の設備構成を確認して算出します。
高圧受電の明細は、請求金額からではなく、契約情報欄の契約電力・最大需要電力・力率という3つの数字から読みます。この3つが基本料金を決めており、施設側の判断で動かせる部分が集中しているからです。
そのうえで請求内訳を「使い方で動く項目」と「単価が外で決まる項目」に仕分け、12か月分を並べて傾向を見る。ここまで自分の手で行えば、次に何を調べるべきかが見えてきます。当社が導入した施設では、規模に応じて年間70万円から720万円の削減につながった例がありますが、その出発点はいずれも12か月分の明細でした。判断が付かないときは、そのまま送っていただければ試算します。