「まずは電力の使用状況を見える化しよう」という提案は、省エネの入り口として広く紹介されています。実際、使用量をグラフで確認できるようになるだけでも、無駄に気づくきっかけにはなります。ただし、見える化を導入した施設の担当者から「ダッシュボードは見るようになったが、電気代の下がり方が思ったより小さい」という声もよく聞きます。
この記事では、電力の見える化にどのような効果があるのか、そしてなぜ見える化だけでは削減額が頭打ちになりやすいのか、大規模施設の視点から解説します。
電力の見える化そのものは、使用量の把握と無駄への気づきをもたらしますが、実際の削減額を決めるのは「見える化した後、何に対応するか」です。グラフやダッシュボードは、これまで見えていなかった使用量の推移を数値として示してくれますが、数値を見るだけでは電気代は下がりません。
見える化で得られる主な効果は、どの時間帯に使用量が多いか把握できること、老朽化した設備や消し忘れなど分かりやすい無駄に気づけること、削減の取り組みを数値で確認できることの3つです。これらは省エネの出発点として意味がありますが、電気料金の構造全体からみると、対応できる範囲は限られています。
電気料金の基本料金を決める契約電力は、直近12か月のうち最も電力を使った30分間の実績で決まりますが、この30分の山は一瞬で過ぎてしまうため、ダッシュボードを人が見ているだけでは対応が間に合わないことがほとんどです。マテハン機器の一斉稼働や空調の起動が重なる瞬間は数分単位で発生し、担当者が気づいたときにはすでに記録されています。
見える化システムの多くは、数値を「表示する」ところまでが役割で、そこから先の「対応する」動きは、担当者の手動対応に委ねられています。不要な照明を消す、老朽化した機器を買い替えるといった対応は、電力量料金には効きますが、契約電力そのものを決める瞬間的なピークには、人の対応では追いつきにくいという構造上の限界があります。
見える化(計測)と、電力需要が跳ね上がる瞬間を自動で抑える制御を組み合わせて初めて、基本料金にまで効果が及びます。特許を取得した制御方式では、施設全体の電力需要を常時監視し、契約電力の水準に近づいたタイミングで自動的に制御をかけることで、担当者がダッシュボードを見ていない時間帯のピークにも対応できます。
見える化を「削減の出発点」、自動制御を「削減を実際の金額に変える手段」と捉えると、両者は対立する選択肢ではなく、順番に組み合わせるものだと分かります。すでに見える化を導入済みの施設であれば、集めたデータをそのまま制御の判断材料として活用できる場合もあります。
見える化の次の一手を検討する目安は、年間の電気料金がおよそ2,000万円以上(月およそ170万円以上)、契約電力50kW以上で高圧電力を受電している施設です。施設の規模によって、削減できる額の目安は次のように変わります。
| 施設 | 年間電気料金 | 削減額の目安 | CO2削減量 |
|---|---|---|---|
| 介護施設・小規模病院 | 1,200万円前後 | 年 70〜120万円 | 約15〜25t |
| オフィスビル・市役所 | 2,000〜3,000万円 | 年 150〜300万円 | 約30〜60t |
| 総合病院・ホテル | 3,000〜5,000万円 | 年 250〜450万円 | 約50〜90t |
| 工場・大型商業施設 | 5,000万円以上 | 年 400〜720万円 | 約80〜150t |
削減できる額は施設の設備構成や負荷の出方によって幅がありますが、年間の電気代削減実績としては70万円〜720万円という範囲になることが多く、あわせて年間数十トン規模のCO2排出量の削減にもつながります。
見える化から自動制御へ一歩進める際は、次の点を事前に確認しておくことをおすすめします。
見える化を始めたばかりでも、電気料金の明細をもとにした試算自体は進められます。データが蓄積されるのを待たずに、現状の契約電力の水準を確認しておくと、次の判断がしやすくなります。
既存の見える化システムを廃止する必要はありません。計測は計測、制御は制御という役割の違いがあるため、多くの場合は併用が可能です。現地調査の段階で、既存システムとの関係を確認できます。
不要にはなりません。節電意識の啓発は電力量料金を抑える効果があり、自動制御は基本料金を抑える効果があるため、対象としている料金の部分が異なります。両方を続けることで、それぞれの効果を活かせます。
現地調査から施工まで、一般的な目安として1〜2か月程度です。施設の規模や工事内容によって前後します。
電力の見える化は、使用量を把握し無駄に気づくための有効な出発点ですが、それだけでは削減額が頭打ちになりやすいという限界があります。理由は、基本料金を決める30分のピークが一瞬で過ぎてしまい、担当者がダッシュボードを見ているだけでは対応が間に合わないためです。見える化を否定する必要はなく、そこに自動で反応する制御を組み合わせることで、初めて基本料金にまで効果が及びます。まずは電気料金の明細をもとに、どの程度の削減余地があるかを確認することから始めてみてください。