電気料金の値引き支援は、2026年9月使用分をもって一区切りを迎えます。10月使用分から先については、現時点で継続が決まっていません。請求書が届くのは使用した翌月ですから、多くの施設では11月に受け取る請求書から、値引きの行が消えた金額が並ぶことになります。
ここで起きるのは、電力会社による値上げではありません。単価そのものは動かず、これまで差し引かれていた行が無くなるだけです。とはいえ年間の電気料金が2,000万円を超えるような施設では、その「無くなるだけ」の金額が決して小さくありません。しかも支援は2023年1月から断続的に続いてきたため、ここ3年ほどの予算や社内報告の基準が、値引きされた後の金額で組まれたままになっている施設も多いはずです。
支援が当たっていたのは請求書のどの部分だったのか、終了で戻る金額をどう見積もるのか、補助に依存しない打ち手は何かを整理します。
電気料金の支援は「1kWhあたりいくら」という形で使用電力量に掛けて計算されます。そのため、契約電力で決まる基本料金には最初から一円も当たっていません。終了後に何が上がるのかを考えるとき、この区別が出発点になります。
高圧で受電している施設に適用された値引き単価は、2026年7月使用分と9月使用分が1kWhあたり1.8円、8月使用分が2.3円と公表されています。8月分だけ手厚いのは、猛暑による使用量の増加を見込んだためとされています。自施設へ適用された単価は、請求書の値引き行で確認できます。
高圧の請求書は、大きく4つの費目でできています。契約電力に単価を掛けた基本料金、使用電力量に単価を掛けた電力量料金、燃料価格の変動を反映する燃料費調整額、そして再生可能エネルギー発電促進賦課金です。支援による値引きは、このうち使用電力量に紐づく形で計算され、請求額から差し引かれてきました。
裏を返せば、支援があった3年近くのあいだも、基本料金は一度も軽くなっていないということです。支援の有無に関係なく重いままだった費目が、そのまま残る形になります。
この違いは言葉の綾ではありません。「電力会社が値上げした」と社内で共有すれば、議論は単価の交渉や切り替えの検討に向かいます。しかし実際に動いたのは単価ではなく、差し引かれていた行が消えただけです。単価は支援の前後で変わっていないのですから、単価に働きかけても、消えた行がそのまま戻ってくるわけではありません。
もうひとつ気をつけたいのが、支援が一時的なものとして設計されてきた点です。実施はそのつど期限を区切って判断されてきました。次の支援を前提に置いた予算は、外れたときに調整の余地がありません。支援は無い前提で組み、実施されたら差益として扱うほうが、期中の管理は楽になります。
直近の請求書に載っている月間の使用電力量に、その月の値引き単価を掛ければ、支援によって差し引かれていた金額がそのまま出ます。試算に特別なデータは要りません。
手順は3つです。請求書からその月の使用電力量をkWh単位で取り出し、同じ月に適用された値引き単価を掛けます。これを直近12か月分並べれば、支援が無い状態で年額がどれだけ増えるかが見えます。
並べてみると、使用電力量が多い月ほど値引き額も大きかったことが分かります。つまり、支援の恩恵が大きかった施設ほど、終了時の跳ね返りも大きい関係になっています。算出した年額は、そのまま来年度予算に上乗せが必要な金額であり、予算の組み替えを求められる場面で根拠として示せます。
電気料金を下げる手段は、1kWhあたりの単価に効くものと、使う量そのものに効くものの2つに分かれます。単価側には下げられる幅の上限があり、毎月効き続けるのは量とピークを下げる側です。
電力会社の切り替えやプランの変更は、単価に働きかける打ち手です。切り替えた時点で単価が下がれば、その差は毎月の請求に反映されます。ただし次の見直しまで金額は動かず、下げられる幅は市場の水準に左右されます。
一方、使用電力量そのものが減ると、電力量料金だけでなく、燃料費調整額と再エネ賦課金も同時に下がります。この3つはいずれも使用電力量に単価を掛けて計算されるためです。設備の更新、運用の見直し、専用システムによる自動制御が、この側に入ります。
そして、ピークを抑えて契約電力を下げられれば、基本料金にも効きます。支援がまったく届かなかった費目に働きかけられる手段は、実質的にここだけです。契約電力は直近12か月で最も高かった30分の平均使用電力で決まるため、山を作らない運用に変えることが、そのまま基本料金の引き下げにつながります。
当社がこれまでに導入した施設では、年間の電気料金が2,000万円から3,000万円ほどの規模で年150万円から300万円、5,000万円を超える工場や大型商業施設で年400万円から720万円といった削減幅になっています。CO2排出量も年間で数十トン単位の削減となり、報告書に載せられる数値として残ります。削減幅は設備構成と負荷の出方によって変わります。
支援の終了をきっかけに省エネの提案を受ける機会が増えます。判断の前に、次の点を確認してください。
現時点では決まっていません。これまでも実施は期限を区切って行われ、そのつど継続が判断されてきました。予算は支援が無い前提で組み、実施された場合に差益として扱うほうが、期中の管理がしやすくなります。
受電方式によって扱いが分かれる場合があります。過去には特別高圧の需要家が国の支援の対象から外れ、自治体が独自の支援を設けた例もありました。実際に適用された単価は、請求書の値引き行でご確認ください。
取り返せる場合もありますが、単価側の打ち手なので下げられる幅には上限があります。また、切り替えでは基本料金の根拠である契約電力は動きません。単価と量の両方から見ることをおすすめします。
直近12か月の請求書を並べ、使用電力量と最大デマンド値を月ごとに書き出すところからです。この2つが分かれば、支援の終了で増える金額と、契約電力を下げる余地があるかどうかが同時に見えてきます。
電気料金の値引き支援は使用電力量に応じて計算されるため、基本料金には最初から届いていません。終了で起きるのは値上がりではなく、値引き前の金額への復帰です。跳ね返る金額は、請求書の使用電力量に値引き単価を掛ければ算出できます。
補助に代わる打ち手は単価側と量側に分かれます。毎月効き続けるのは使う量とピークを下げる側で、とりわけ契約電力を下げる取り組みは、支援が届かなかった基本料金に働きかけられる数少ない手段です。支援の有無に左右されない構造にしておくことが、次に区切りが来たときの備えにもなります。