省エネ法の対象になったという連絡を受け取って、最初に浮かぶ疑問が「エネルギー管理士の資格を持った人を置かないといけないのか」ではないでしょうか。社内に免状を持つ人がおらず、試験は年に一度と聞けば、間に合わないのではと不安になります。
調べ始めると、資格の取得方法や試験の難易度を解説したページにたどり着くことが多く、施設の側から見た「うちは選任が要るのか、要るとして誰を置けばよいのか」という判定の手順にたどり着くまでに時間がかかります。
結論から書きます。エネルギー管理士の免状が必須になる施設は、思われているよりずっと限られています。この記事では、選任義務の構造を三階建てに分けて示したうえで、事業所ごとに誰を置くことになるのかを、使用量と業種の2つの軸で判定できるように整理します。
エネルギー管理士の免状を持つ人を必ず置かなければならないのは、製造業・鉱業・電気供給業・ガス供給業・熱供給業の5業種に属し、かつ年間のエネルギー使用量が原油換算3,000kL以上の事業所に限られます。病院・ホテル・商業施設・オフィスビル・物流センター・自治体の庁舎などは、この5業種に入りません。同じ規模でも、置くのは「エネルギー管理員」であり、エネルギー管理講習を修了していれば要件を満たします。
省エネ法が求めているのは「決められた役割に人を置くこと」であって、「エネルギー管理士を採用すること」ではありません。資格の要否は、役割ごとに異なります。
事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算1,500kL以上になると特定事業者に指定され、まず会社単位でエネルギー管理統括者とエネルギー管理企画推進者を1名ずつ選任します。そのうえで、指定を受けた事業所ごとに、エネルギー管理者またはエネルギー管理員を選任します。
事業所単位で誰を置くかは、その事業所の年間エネルギー使用量が原油換算3,000kL以上かどうかと、5業種に属するかどうかの、2つの条件だけで決まります。この2つを順に当てはめれば、免状が要るのか、講習で足りるのかがその場で分かります。
使用量が3,000kL以上の事業所は第一種エネルギー管理指定工場等、1,500kL以上3,000kL未満の事業所は第二種エネルギー管理指定工場等として指定されます。第一種のうち5業種に属する事業所だけが、エネルギー管理士の免状を持つ人からエネルギー管理者を選任することになり、その人数も使用量の区分に応じて1人から4人まで増えていきます。
エネルギー管理員は、エネルギー管理士の免状がなくても、エネルギー管理講習を修了すれば選任できます。この講習は受講資格の制限がなく、オンラインでの受講にも対応しています。免状の取得と比べると、体制を整えるまでの時間が大きく違います。
一方、エネルギー管理士の免状は二つの経路で取得します。国家試験に合格したうえでエネルギーの使用の合理化に関する実務に1年以上従事するか、申込みの時点で3年以上の実務経験を持つ人が認定研修を修了するかのいずれかです。どちらも短期間では整いません。自社が免状を要する区分に当たるのかを先に確かめておかないと、要らない準備に時間を使うことになります。
人を決めれば終わりではありません。選任や解任があったときは、その事由が生じた日以後、最初に到来する7月末日までに、所管の経済産業局へ届出書を提出します。担当者の異動が多い施設では、この届出漏れが起きやすい箇所です。
さらに、毎年度7月末日までに定期報告書を提出し、エネルギー消費原単位を中長期的にみて年平均1%以上低減するという努力目標に沿って改善を続けることが求められます。選任された人に実際にのしかかるのは、資格の有無ではなく、毎年提出できる数値を持っているかどうかです。
ここでつまずく施設には共通点があります。月々の請求額は分かっても、どの設備がいつ電気を使ったのかまでは分からない。だから報告書の数値は前年と同じ理屈でしか書けず、改善したという説明が立たない。計測して見えるようにするところから始める必要があるのは、このためです。
選任そのものは、事業者が自社の中から人を選んで行います。外部の会社に肩代わりしてもらう性質のものではありません。一方で、計測・分析・報告に使う数値を作る部分は外部に任せられます。この線引きを踏まえて、支援先を選ぶときは次の点を確かめてください。
選任は事業者が自社の中から人を選んで行うもので、社外の人に肩代わりしてもらう性質のものではありません。ただし、免状が必須になるのは5業種の第一種エネルギー管理指定工場等に限られ、それ以外の区分はエネルギー管理講習の修了で要件を満たせます。計測や分析、報告用の数値づくりは外部の支援を受けられます。
上下の関係ではなく、性質が違います。エネルギー管理士は国家資格の免状で、エネルギー管理員は省エネ法上の役割の名前です。免状を持つ人はエネルギー管理員にも就けますが、逆にエネルギー管理員として選任されたからといって免状が得られるわけではありません。
後任を選任したうえで、選任と解任の届出書を、その事由が生じた日以後、最初に到来する7月末日までに所管の経済産業局へ提出します。異動の時期にまとめて手続きしておくと、届出漏れを防げます。
選任は入口にあたります。このあと毎年度、定期報告書の提出と、エネルギー消費原単位を年平均1%以上低減する努力目標への対応が続きます。改善を数値で説明できる状態を作っておくことが、実務としては本題になります。
エネルギー管理士の免状が必須になるのは、製造業・鉱業・電気供給業・ガス供給業・熱供給業の5業種に属する第一種エネルギー管理指定工場等に置くエネルギー管理者だけです。病院・ホテル・商業施設・オフィスビル・物流センターなどは、同じ規模でもエネルギー管理員で足り、エネルギー管理講習の修了で要件を満たせます。
資格の準備に走る前に、自社が三階建てのどの枠に当たるのかを確かめてください。そのうえで残る課題は、毎年度の報告に耐える数値をどう作るかに移ります。使用量を計測して見えるようにし、ピークを抑えて実際に減らし、削減量を数値で受け取れる形にしておけば、選任された人の負担は軽くなりやすくなります。