「電気料金を下げたいが、設備を入れ替える予算が取れない」。省エネの検討が、この一点で止まってしまう施設は少なくありません。金額が大きくなるほど、稟議のハードルは上がります。
その過程で行き当たるのが、ESCO事業という契約の形です。ただ、社内の稟議で必要になるのは、定義や方式名のさらに先の情報です。削減できたかどうかは誰が、何と比べて測るのか。契約は何年続くのか。自分の施設は対象になるのか。
この記事では、ESCO事業の仕組みと、締結前に確かめておきたい論点を整理します。年間の電気料金が2,000万円以上の大規模施設を想定しています。
ESCO事業とは、省エネルギー改修にかかった費用を、その改修によって削減できた光熱水費の中から支払っていく契約の形です。事業者は省エネ診断・設計・施工・運転管理・資金調達までを一括で引き受け、削減できた分の一部を報酬として受け取ります。
通常の設備工事では、工事が終われば効果の大小にかかわらず請求額は変わりません。ESCO契約は、支払いの原資が「削減できた額」に紐づいている点が違います。またESCO契約では、省エネ効果について事業者が一定の水準を約束し、届かなかった場合の扱いを契約書であらかじめ決めておきます。
ESCO事業の契約方式は、工事費用を施設側が調達する「ギャランティード・セイビングス契約」と、事業者側が調達する「シェアード・セイビングス契約」の2つに大別されます。どちらを選ぶかで、初期投資の有無だけでなく、金融機関への返済義務を誰が負うか、契約期間中に設備を誰が所有するかまでが変わります。
自己資金や起債で工事費を用意できる場合はギャランティード型が選ばれやすく、支払総額は抑えられます。予算措置が難しい場合はシェアード型が候補ですが、事業者が資金を調達する分、金利などの負担が上乗せされ、支払総額は大きくなるのが通例です。
とくに所有権は見落とされがちです。契約期間中の設備が事業者の資産である場合、施設側の判断だけで改造や増設を行うと契約違反になることがあります。
ESCO事業の削減量は、実際に使った量を「改修しなかったら使っていたはずの量(ベースライン)」と比べて算出します。前年の実績と単純に引き算するわけではありません。この違いが、契約後のトラブルの分かれ目になります。
猛暑の年と冷夏の年では、同じ運用でも空調の消費電力は変わります。病床や客室の稼働率、生産量が増えれば、電力使用量も増えます。前年実績と素朴に比べると、こうした外部要因が削減量の評価に紛れ込みます。そこでESCO契約では、基準となる期間のデータを取り、気温・稼働時間・生産量などの変動に応じて補正した値をベースラインに据えます。
したがって、提案を受ける段階で確かめるべきは削減率の大きさだけではありません。基準期間をいつからいつに取るのか。何を補正の変数に使うのか。その計算式を施設側でも検証できるのか。この3点が契約書または覚書に書かれているかどうかで、契約後に数字を巡って認識がずれる確率が変わります。
ESCO事業の契約期間は、一般に9〜15年程度とする解説がある一方、国内の実務では6〜8年程度に収める例が多いとされており、情報源によって幅があります。これは基準が曖昧なのではなく、期間の決まり方が「投資額を年間の削減額で回収しきる長さ」に近いためです。
大がかりな熱源設備や受変電設備の更新まで含めれば投資額は大きくなり、回収には十数年を要します。照明や制御の範囲にとどめれば投資額は小さくなり、期間は短く収まります。提案書の年数は相場ではなく、その提案が含む工事範囲の話だと読むのが正確です。
ただし、契約期間中の用途変更や統廃合の可能性、中途解約時の違約金、満了後に削減分がすべて施設の利益になるのかは、事前に確認しておきたい点です。
ESCO事業は設備の更新を伴う手法です。機器がまだ使える施設では、制御の見直しだけで下がる余地が残っていないかを先に確かめたほうが、判断を誤りにくくなります。更新を前提に検討を始めると、投資額が大きい前提でしか比較できなくなるためです。
高圧受電の施設では、基本料金が直近12か月で最も高かった30分の平均使用電力(デマンド値)で決まります。ここは機器を入れ替えなくても、運転のタイミングを制御することで下げられる部分です。契約電力が下がれば基本料金は12か月分にわたって下がり、室温や稼働そのものを我慢する必要もありません。
当社が提供しているのは、この制御にあたる部分です。特許を取得した制御方式で設備の運転を最適化し、電気工事士資格を持つ自社スタッフが施工まで行います。初期費用は0円で、削減できた電気料金の範囲内でお支払いいただくため、資金調達の枠を使いません。約3,500社・12,000施設での導入実績があり、稼働実績は20年以上です。年間の削減額は施設の規模により70万円から720万円、CO2排出量は年間数十トンの削減となった実績があります。
老朽化が進み、いずれ更新が避けられない施設では、ESCO事業が有力な選択肢になります。一方、機器の残存年数がまだあり、契約電力に下げる余地が見えている施設なら、制御を先に入れて効果を確かめ、更新の時期に大きな投資を検討する順序も成り立ちます。
次の点を確かめておくと比較がしやすくなります。いずれも契約後に変更するのが難しい項目です。
とくに施工体制は、稼働を止められない施設ほど差が出ます。
リースは設備を借りる契約で、支払額は設備の価格と期間で決まります。ESCO事業は省エネ効果に対して対価を払う契約で、効果の測定と報告が契約に組み込まれている点が異なります。
使えます。庁舎や公立の病院、体育館などで実績があります。ただし公募の手続きが必要なため、着手までの期間は民間施設より長くなる傾向があります。
診断や設計の費用が固定的にかかるため、規模が小さいと投資に見合いにくくなります。当社では年間2,000万円以上、月におよそ170万円以上を目安としています。
効き方が異なるため、併用を検討できます。電力会社の切り替えは単価に効く打ち手で、ESCO事業や制御は使用量とピークに効く打ち手です。
ESCO事業は、省エネ改修の費用を削減できた光熱水費でまかなう契約の形です。契約方式は資金を誰が調達するかで2つに分かれ、削減量は補正済みのベースラインとの差で評価されます。契約期間は工事の範囲でおおむね決まります。
検討の入口で見落とされやすいのは、設備を入れ替えずに下げられる範囲が残っていないか、という点です。高圧受電の施設なら、契約電力の見直しは機器の更新を待たずに着手できます。まずは明細で基本料金の占める割合を確かめるところから始めてみてください。当社では明細をお預かりして、年間の削減見込み額とCO2削減量を無料で試算しています。