「来年度の電気代は、いくらで見ておけばいいですか」。年度の後半に入ると、この質問が経理や経営企画から施設管理の担当者に回ってきます。手元にあるのは今年度の実績と毎月の請求書だけで、前年実績に何%かを掛けた数字を出しても、根拠を聞かれると答えに詰まります。
実際、前年実績に一律の係数を掛けて組んだ予算は、期中で崩れやすいものです。電気代は性質の違う費目の合計であり、動く理由も動く時期も費目ごとに違うためです。
この記事では、年間の電気料金が2,000万円を超える施設を想定し、予算を費目ごとに積む手順を説明します。あわせて、予算を組むこの時期にしか手を打てない「来年度の基本料金」にも触れます。
高圧受電の電気料金は、基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金という、性質の違う4つの合計です。ほとんど動かない費目と、月ごとに大きく動く費目が混ざっているため、全体に同じ係数を掛けるとどちらにも合わない数字になります。
基本料金は契約電力で決まり、使う量が増減してもその月は動きません。電力量料金は使った量に比例し、燃料費調整額は毎月改定されて年度をまたぐと幅が大きく出ます。再エネ賦課金は国が年度ごとに単価を定めるため、年度内は動きません。
動く幅が大きいのは4つのうち一部だけです。分けずに扱うと、予算が外れたときに何が原因だったのかを説明できなくなります。
4つの費目は確定度合いが違います。確定に近いものから先に置くと、予算全体のどこが不確かなのかが見えます。
基本料金は「基本単価 × 契約電力 × 力率による割引」で決まり、使用量とは連動しません。契約電力が分かっていれば、来年度分は誤差の小さい確定値として予算に置けます。
契約電力500kW未満の施設では実量制がとられ、当月と過去11か月の最大需要電力(30分ごとの平均使用電力)のうち最も高い値が契約電力になります。500kW以上は電力会社との協議で決まります。いずれの場合も、直近12か月の最大値を照会すれば、来年度の起点となる数字が手に入ります。
昨年度の月別使用電力量(kWh)を並べ、来年度の増減要因だけを手で足し引きします。設備の増設・更新、稼働日数の変更、改修による休止期間などが該当します。単価は現在の契約の単価表を使い、契約満了月が年度内にあれば、その月以降を別の前提に切り替えます。
複数の前提を置く必要があるのは、4つの費目のうちここだけです。契約中の電力会社が公表している過去24か月分の調整単価を並べ、最小値・最大値・直近値を取り出し、来年度の想定使用量を掛けて幅の3本を作ります。予算に載せるのは中央の1本でよく、残りは「どこまで振れうるか」を説明する材料として手元に置きます。
再エネ賦課金の単価は国が年度ごとに定め、経済産業省が公表した2026年度の単価は1kWhあたり4.18円です。適用は5月検針分から翌年4月検針分までで、4月始まりの予算年度とは1か月ずれます。新年度の単価が公表されるのは年度末近くになるため、予算策定の段階では現行単価で置き、公表後に差し替えます。
実量制では、契約電力は当月を含む過去12か月の最大デマンド値で決まります。したがって予算年度の前半にあたる月の基本料金は、予算を組んでいる時点の直近の山によって、すでに動かせない部分が大きくなっています。
下の図は、予算年度の各月の契約電力を決める12か月がどこにあたるかを時間軸に並べたものです。予算年度の前半にあたる月ほど、その12か月の大半がすでに過ぎています。
基本料金を「前年据え置き」と1行で済ませる前に、直近12か月の最大値がいつ出たものか、その山が何によって起きたのかを確認しておく価値があります。空調の一斉起動や生産設備の同時稼働のように理由がはっきりしていれば、同じ山を出さない手立てが、予算年度の後半から効いてきます。
来年度の前半をこれから下げることはできません。予算としては据え置き、後半に向けた手立ては別に立てる。この切り分けが、根拠のある予算になります。
予算の精度をどれだけ上げても、支払う金額そのものは変わりません。ただし、予算を組む過程で並べた月別のデータは、そのまま削減余地の在りかを示しています。
当社が導入している専用システムは、施設の使い方を変えずに空調や熱源の運転を細かく制御し、ピークと使用量の両方を抑えるものです。約3,500社・12,000施設への導入実績があり、20年以上の稼働実績があります。削減額の目安は、年間電気料金2,000〜3,000万円の施設で年150〜300万円、5,000万円以上の施設で年400〜720万円です。
予算編成の観点では、初期費用0円のスキームが扱いやすい場合があります。設備投資として予算枠を確保する必要がなく、削減できた電気料金の範囲内で支払う形になるためです。
予算と実績の差異を後から説明するには、記録の取り方を先に決めておく必要があります。毎月「使用電力量(kWh)」「最大デマンド値(kW)」「請求額」の3つを控えておけば、差異の原因を切り分けられます。
施工を伴う施策を検討する場合は、誰が工事をするのかも確認しておきたい点です。当社では電気工事士資格を持つ自社スタッフが施工を担当し、外部への委託は行っていません。導入後は削減できた電気料金とCO2削減量を数値でご報告しますので、翌年度の予算の根拠にもそのまま使えます。
月別をおすすめします。基本料金は毎月ほぼ一定でも、使用量と燃料費調整額は季節によって動くため、年額だけで持っていると期中のどこで差異が出たのかが分からなくなります。
切り替え後の単価表で電力量料金の単価だけを置き換え、使用量と契約電力の前提は据え置いてください。切り替えで動くのは単価の側であり、使用量と契約電力は施設の使い方で決まるためです。
効き始める月と効く費目を確認したうえでなら織り込めます。ただし契約電力を下げる施策は、実量制では過去12か月の最大値が入れ替わるまで基本料金に反映されないため、反映の時期を後ろにずらして見込んでください。
毎月、使用電力量(kWh)・最大デマンド値(kW)・請求額の3つを記録してください。この3つがあれば、差異が使い方によるものか単価によるものかを後から切り分けられます。
電気代の予算は、前年実績に係数を掛けるのではなく、動き方の違う4つの費目に分けて積みます。基本料金は契約電力から確定値に近い形で置け、電力量料金は使用量と単価を分けて置き、幅を持たせるのは燃料費調整額だけで足ります。再エネ賦課金は年度単価が公表されてから差し替えます。
押さえておきたいのは、予算年度の前半の基本料金が、予算を組む時点ですでに大半決まっている点です。これから抑えられるのは後半以降であり、その手立ては予算とは別に立てる必要があります。電気料金の明細をご用意いただければ、お使いの施設で年間いくら下げられるかを無料で試算いたします。