「電気代を下げろ」という経営指示が現場に降りてきたものの、工場の生産ラインは24時間止められない。そんな状況で、この記事にたどり着いた方が多いのではないでしょうか。
工場の電気代削減を調べると、LED化や空調の設定温度見直しといった一般的な節電策が並びます。ただし、生産設備が24時間稼働している工場では、空調を止めたり温度を大きく変えたりすることは、製品の品質や作業環境に直結するため簡単には実行できません。
この記事では、生産ラインを止めずに電気料金を下げるために、どこを見るべきかを整理します。年間の電気料金が2,000万円以上(月およそ170万円以上)の規模を想定していますが、考え方は工場の大きさを問わず共通です。
工場の電力使用量は、一般に生産設備の稼働が大半を占めるとされています。空調や照明を見直しても、動かせるのは全体の一部にすぎません。削減の主戦場は、生産設備が稼働するタイミングそのものにあります。
設定温度を上げ下げしたり、生産設備の稼働を止めたりする方法は、24時間稼働の工場では実行が難しくなります。品質管理のために温湿度を一定に保つ必要がある工程も多く、運用でしのぐのではなく、稼働を止めずに電気の使い方を変える方法を探す必要があります。
電力会社や料金プランの見直しは有効な手段のひとつですが、そこで動くのは主に電力量料金の単価です。請求額のもう一方の柱である基本料金は、単価を変えても使用量を少し減らしても、原則として下がりません。基本料金は「契約電力」という別の数値で決まっているからです。
高圧受電(契約電力50kW以上)の工場では、契約電力は申告制ではなく実績で決まります。30分ごとの平均使用電力(デマンド値)を計測し、直近12か月のうち最も高かった値が、そのまま向こう1年の契約電力になる仕組みです。
工場でこの値を押し上げやすいのは、複数の生産ラインや空調、コンプレッサーの稼働タイミングが重なる瞬間です。年間のほかの時間帯をどれだけ丁寧に節電しても、この一点が下がらなければ基本料金は動きません。逆に言えば、ピークになる30分をいくつか削れば、基本料金が年間を通して下がることが見込めます。
ピークを抑える制御は、生産ラインや空調を止めることではありません。専用システムが工場全体の使用電力を常時計測し、30分の平均値が目標を超えそうになったときだけ、複数ある空調室外機の圧縮機などを数分ずつ順番に休ませます。
1台あたりの停止は短時間で、しかも同時に休ませるのは一部だけです。生産ラインの稼働や送風は続いており、作業環境は数分では大きく動きません。職員が操作する必要はなく、設定した目標値に沿ってシステムが自動で判断します。
当社が扱う制御方式は特許を取得しており、稼働実績は20年以上、これまでに約3,500社・12,000施設で稼働しています。
どれくらい下がるのかは、年間の電気料金の規模からおおよその見当がつきます。当社がこれまでに導入した施設の実績にもとづく目安は次のとおりです。
| 施設 | 年間電気料金 | 削減額の目安 | CO2削減量 |
|---|---|---|---|
| 介護施設・小規模病院 | 1,200万円前後 | 年 70〜120万円 | 約15〜25t |
| オフィスビル・市役所 | 2,000〜3,000万円 | 年 150〜300万円 | 約30〜60t |
| 総合病院・ホテル | 3,000〜5,000万円 | 年 250〜450万円 | 約50〜90t |
| 工場・大型商業施設 | 5,000万円以上 | 年 400〜720万円 | 約80〜150t |
大規模な工場は一番下の行に当てはまることが多く、この場合の削減額は年400〜720万円が目安です。実際の削減額は設備の構成とデマンド値の出方によって変わるため、正確な数字は電気料金明細から個別に試算します。
省エネの提案を受けたときは、見積書の金額より先に次の四点を確認しておくと判断を誤りにくくなります。
工場の電気代は、生産設備の稼働が大半を占めます。24時間稼働で温度設定や稼働時間を我慢する節電は使いにくく、電力会社の見直しだけでは基本料金に手が届きません。
残る打ち手が、基本料金の根拠になっている契約電力を下げることです。30分単位のピークだけを狙って制御すれば、生産ラインを止めたまま我慢するのではなく、年間の請求額を圧縮できる可能性があります。まずは自施設の電気料金明細で、基本料金と電力量料金がそれぞれいくらなのかを確認するところから始めてください。