2026年4月に改正GX推進法が施行され、排出量取引制度(GX-ETS)が本格稼働の段階に入りました。社内で「うちの施設は対象になるのか」と問われ、調べ始めた方も多いはずです。
制度の全体像を扱う情報は多い一方で、「自社が対象かをどう確かめるか」「対象外なら何をすればいいのか」まで踏み込んだ整理は多くありません。判定の分かれ目になる直接排出と間接排出の違いも、曖昧なままにされがちです。
この記事では、対象になる条件を自分で判定できる形にほどき、対象外だった場合の準備まで整理します。年間の電気料金が2,000万円を超える規模の施設を想定しています。
GX-ETSの義務対象は、事業活動に伴うCO2の直接排出量が直近3年度の平均で年10万トン以上となる事業所を保有する法人です。対象となる法人は全国で約300〜400社と見込まれているとされ、鉄鋼・セメント・化学・石油・電力など、燃料を大量に燃やす業種が中心になります。
判定の単位も押さえておきましょう。公表されている説明では、基準を超える事業所を保有する法人が対象と整理されています。基準量や判定方法の細部は政令で定められるため、境界に近い規模であれば最新の公表内容をご確認ください。
対象になった法人には、毎年度の直接排出量を算定して第三者機関の検証を受けたうえで国に報告し、報告した排出量と同量の排出枠を償却することが求められます。制度初年度は特例で、2026年度は年度平均排出量の届出と移行計画の提出を9月30日までに行い、排出枠の割当は2027年度に回ります。償却しきれなかった分には、参考上限取引価格の1.1倍にあたる未償却相当負担金が科されます。
買った電気の使用に伴うCO2(Scope2の間接排出)は、GX-ETSの算定にも排出枠の割当にも入りません。対象になるのは、自社の敷地内で燃料を燃やして出るエネルギー起源CO2の直接排出(Scope1)だけです。
電気を大量に使う施設ほど排出量は大きく見えますが、その多くは発電する側の排出として計上されます。ボイラーで重油や都市ガスを燃やしている、非常用ではない自家発電機を日常的に回している——そうした燃焼設備があって初めて、直接排出が積み上がります。
電気の使用量がどれほど多くても、それだけで年10万トンに届くことはまずありません。総合病院や商業施設、物流センター、オフィスビルのように電力が中心の施設は、規模が大きくても義務対象の外に出るのが通常です。ただし対象範囲が将来広がる可能性は示されており、間接排出を把握しなくてよい話にはなりません。
義務対象から外れても、取引先からの要請・電気料金への波及・燃料コストの上昇という3つの経路で、制度の影響は施設側に届きます。「対象外だから何もしなくてよい」とはなりません。
対象になった大企業は、サプライチェーン全体の排出(Scope3)についても削減を求められる立場に置かれます。その結果、部材の供給元や委託先に対して、排出量の算定・報告や削減目標の提示を求める動きが強まります。取引の条件として、施設単位のCO2排出量と推移を出せるかが問われる場面は増えていきます。
排出枠は当初、原則として無償で割り当てられますが、発電部門については2033年度から有償オークションが導入される予定です。発電事業者が排出枠の調達に費用を負担すれば、その分は電気料金の原価に乗ってきます。電気を買っている限り、この経路からは逃れられません。
2028年度からは化石燃料賦課金の導入が予定されています。燃料の輸入事業者などに課される負担で、燃料価格を通じて広く波及します。ボイラーの燃料費にも、電気料金の燃料費調整額にも効きます。
制度対応そのものより先に効くのは、使った電気の量と、それに伴うCO2排出量を、月単位で説明できる状態にしておくことです。要請が来てから集め始めると、過去の数値がそろわず遡れません。
そのうえで、削減は電力量(kWh)とピーク電力(kW)の両方に手を入れると効率がよくなります。使用量を減らせば間接排出とその報告値が下がり、30分ごとのピークを抑えれば契約電力が下がって基本料金が軽くなります。
当社が導入している専用システムは、施設の稼働や室温を我慢させることなく、30分ごとのピークの平準化を図る制御を行います。特許を取得した制御方式で、稼働実績は20年以上、導入は約3,500社・12,000施設にのぼります。初期費用は0円で、削減できた電気料金の範囲内でお支払いいただく仕組みです。施工は電気工事士資格を持つ自社スタッフが担当し、CO2削減量も数値でご報告します。
施設規模別の削減目安は次のとおりです。
| 施設 | 年間電気料金 | 削減額の目安 | CO2削減量 |
|---|---|---|---|
| 介護施設・小規模病院 | 1,200万円前後 | 年 70〜120万円 | 約15〜25t |
| オフィスビル・市役所 | 2,000〜3,000万円 | 年 150〜300万円 | 約30〜60t |
| 総合病院・ホテル | 3,000〜5,000万円 | 年 250〜450万円 | 約50〜90t |
| 工場・大型商業施設 | 5,000万円以上 | 年 400〜720万円 | 約80〜150t |
省エネの提案を受けるときは、次の3点を確認しておくと、あとの食い違いが減ります。
高圧受電(契約電力50kW以上)の施設では、受変電設備の切り替えで停電を伴う場合があります。作業の有無も現地調査の段階で確認しておくと安心です。
公表されている制度の説明では、基準を超える事業所を保有しているかどうかで法人が対象になるとされています。境界に近い規模の場合は、政令で定められる基準量と判定方法を、最新の公表資料でご確認ください。
別の制度です。省エネ法はエネルギー使用量の報告と使用の合理化を求めるもので、GX-ETSは直接排出量に対する排出枠の償却を求めます。省エネ法の報告対象であっても、GX-ETSの義務対象になるとは限りません。
義務としては生じませんが、取引先から提出を求められる場面は増えています。毎月の電力使用量から換算できる形にしておけば、遡って集める手間がなくなります。
間接排出の削減としては有効ですが、電気の使用量そのものは変わりません。再エネメニューは割高になる場合があるため、使用量とピークを下げる対策と組み合わせてご検討ください。
GX-ETSの義務対象は、直接排出が年10万トン以上となる事業所を持つ法人に限られます。電気の使用に伴う排出は算定に入らないため、電力が中心の施設の多くは対象外です。
ただし、取引先からのデータ要請、発電部門の有償化を通じた電気料金への波及、化石燃料賦課金という3つの経路で、影響は対象外の施設にも届きます。期限に追われる立場でないうちに、電力使用量とCO2排出量を月単位で説明できる状態を整え、使用量とピークを下げておくことが有効な備えになります。