「見えない」を支える

「見えない」を支える

株式会社Media Japan

「見えない」を支える

空調の設定温度と省エネ効果|1℃で10%は電気代のどこに効くか

2026/08/25
記事

空調の設定温度を1℃上げれば10%の省エネになる——省エネの担当になると、まずこの数字に行き当たります。全館のリモコンを回って設定を28℃に揃え、掲示も出した。それでも翌月の請求書は、思ったほど変わっていない。

この結果は珍しいものではありません。「1℃で約10%」という目安が誤りなのではなく、その10%が何にかかる10%なのかが、説明では省略されがちだからです。年間の電気料金が2,000万円を超える施設では、この省略が大きな見込み違いにつながります。

この記事では、設定温度の緩和が電気料金のどこにどれだけ効くのかを、段階を追って整理します。

「設定温度1℃で約10%」は、空調機の消費電力に対する数字

1℃の緩和で約10%というのは、空調機が使う電力に対する削減率であり、施設全体の電気料金に対する削減率ではありません。請求額に換算するには、空調が施設全体の電力に占める割合を掛けたうえで、料金の内訳に照らし直す必要があります。

まず元の数字を確認します。一般に、設定温度を1℃緩和した場合の削減効果は冷房で約13%、暖房で約10%とされています。業務用・産業用の設備を対象とした環境省の資料でも、1℃の緩和で約10%、2℃以上ではまとめて15%という見込み値が使われています。いずれも対象は空調設備の消費エネルギーです。

ここに割合を掛けます。一般に、事務所ビルの夏季の消費電力は空調が約48%を占めるとされています。空調の消費電力が10%減っても、施設全体の電力使用量で見れば約4.8%にとどまります。

さらにもう一段あります。高圧受電の電気料金は電力量料金だけで決まるわけではなく、契約電力で決まる基本料金と、使用量に比例する再生可能エネルギー発電促進賦課金が加わります。使用量が4.8%減っても、基本料金が動かなければ請求額の減り方はそれより小さくなります。

設定温度を1℃緩和したとき、削減率はどこまで届くか 空調機の消費電力 約10%減 空調が施設全体の電力に占める割合(約48%)を掛ける 施設全体の電力使用量 約4.8%減 契約電力で決まる基本料金は、この緩和では動きにくい 電気料金の請求額 約4.8%より小さくなる ※ 空調が占める割合は、施設の用途と設備構成によって変わります

図1:削減率は、空調機から施設全体、請求額へと下りるたびに小さくなります。掲示に書かれる「1℃で10%」は、いちばん上の帯の話です。

設定温度の緩和は、基本料金にはほとんど効かない

基本料金を決めるのは契約電力で、契約電力は直近12か月のうち最も高かった30分の平均使用電力で決まります。設定温度の緩和は「使った量」を削る打ち手であり、この一点の山を狙って下げる打ち手ではありません。

山が立つのは、設定温度がいちばん効きにくい時間帯

デマンド値の最大は、多くの施設で最も暑い日の午前中から昼過ぎに記録されます。夜間に熱を溜め込んだ建物を目標の室温まで引き下げるため、空調機がほぼ全力で運転している時間帯です。

設定が28℃でも、室温がそれを大きく上回っていれば、機器に「全力で冷やす」以外の選択肢はありません。設定が1℃高い分だけ全力運転の時間は短くなりますが、その最中の使用電力の高さは変わりません。契約電力を決めるのは高さであって、長さではないのです。

基本料金を動かすには、その30分に何台が同時に立ち上がっているかを制御する必要があります。設定温度の掲示では、ここに手が届きません。

設定温度を緩めても、想定どおりに下がらない4つの理由

設定温度の緩和が効かなかったという報告の多くは、次の4つのどれかに当てはまります。効果を測る前に、自分の施設がどれに当たるかを確認しておくと無駄が省けます。

設定を緩めたのに、消費電力が動かなかった施設で起きていること 1 外気と日射は変わらない 窓や外壁から入る熱の量は、設定を変えても 同じだけ入り続けます 2 立ち上げは全力のまま 目標に届くまでの運転は、設定が1℃高くても ほとんど同じ強さです 3 そもそも届いていない 室温が設定に達していない部屋では、緩和しても 運転の中身が変わりません 4 現場で戻されている 暑い・寒いと感じた人がリモコンを操作し、 数日で元の設定に戻ります ※ 4は、設定値を現場で変更できる運用になっている施設で起こります

図2:4のように設定が戻されている場合、効果が出ていないのではなく、そもそも緩和が実施されていない状態です。

とくに4は、効果が出ていないのではなく、緩和がそもそも実施されていない状態です。設定温度は人が変えられる値であり、掲示や通達だけでは維持されません。

室温を緩められない施設は、何を選べるか

室温を緩められない施設では、設定温度以外の要素——立ち上げの重なり方、外気の取り込み量、機器ごとの運転の配分——を動かすことになります。室温を変えずに消費電力を下げる余地は、ここに残っています。

事務所については、事務所衛生基準規則で室の気温を18℃以上28℃以下とする努力義務が定められています(2022年4月1日から、下限が17℃から18℃に改められました)。この範囲内であれば、設定を緩める余地は制度上あります。

一方、施設の性格そのものが室温を縛る場合もあります。用途によって緩められる余地は大きく異なり、「まず28℃に」が実行できない施設は少なくありません。

施設の種類 室温を緩める余地 そう判断する理由 事務所・庁舎 余地がある 規則の努力義務は18〜28℃ 宿泊施設・商業施設 限られる 快適性が評価に直結する 工場・物流センター 限られる 製品や保管物に温度条件がある 病院・介護施設 ほぼ無い 室温が利用者の体調に直結する ※ 同じ用途でも、部屋ごとに事情は異なります。手術室・サーバー室などは別に扱ってください

図3:室温を緩める余地が乏しい施設ほど、設定温度以外の打ち手を先に検討する価値があります。
お使いの施設で、いくら下がるか無料で試算します
電気料金の明細をご用意いただければ、年間の削減見込み額とCO2削減量を算出してご提示します。ご相談だけでも歓迎です。

サービスの詳細を見る →

室温を変えずに、空調の電力を下げる3つの方向

設定温度に手をつけられない場合でも、打ち手は残っています。いずれも室温を犠牲にせず、使い方の側を変えるものです。

  • 立ち上げを重ねない:朝、全系統を同時に起動せず、区画ごとに数分ずつずらします。室温が目標に届く時刻はほぼ変わらないまま、同じ30分に重なる台数を減らせます
  • 外気の取り込み量を見直す:換気で取り込んだ外気は、そのまま冷やす・暖める対象になります。在室人数に対して過大な外気量になっていないかを確認します
  • 30分単位で監視し、超えそうなときだけ自動で加減する:デマンド値が設定した水準に近づいたときに限って、系統ごとに運転を短時間ずつ抑えます。室温を大きく動かさずに、山の高さだけを削る考え方です

3つ目が、当社が特許を取得した制御方式で行っている部分です。専用システムが30分ごとの使用電力を監視し、山が立ちそうな局面でのみ機器の運転を配分します。室温の設定値は触りません。導入実績は約3,500社・12,000施設、稼働実績は20年以上で、年間の電気代削減額は施設の規模に応じて70万円〜720万円、CO2排出量では年間数十トンの削減が見込めます。初期費用は0円で、削減できた電気料金の範囲内でお支払いいただく形です。

導入前に確認しておきたいこと

制御の導入に進む前に、次の3点を手元で確かめておくと話が具体的になります。

  • 明細を電力量料金と基本料金に分けて見る:設定温度の緩和で動くのは主に電力量料金です。合計だけを見ていると、何が効いて何が効かなかったのかが分かりません
  • 過去12か月の最大デマンド値を取り寄せる:契約している電力会社に依頼すれば入手できます。いつ・どの月に山が立っているかが分かると、対策すべき時間帯が絞れます
  • 誰が施工するのかを確認する:受変電設備や制御盤に関わる工事のため、実際に手を動かすのが有資格者かを確認する価値があります。当社は電気工事士資格を持つ自社スタッフが施工し、外部委託は行いません

よくある質問

夏の設定温度は28℃にすべきですか?

28℃は環境省が推奨する室温の目安であり、リモコンの設定値の基準ではありません。事務所については事務所衛生基準規則で18℃以上28℃以下とする努力義務があり、実際の室温がその範囲に収まるよう調整するのが本来の考え方です。

設定温度を2℃緩めれば、削減効果は2倍になりますか?

単純に2倍にはなりません。業務用・産業用を対象とした環境省の資料では、2℃以上の緩和はまとめて15%という見込み値が使われています。幅を広げるほど1℃あたりの効き目は小さくなり、室内からの不満は大きくなります。

設定温度を緩めた効果は、どうやって確かめられますか?

電気料金明細の電力量料金と基本料金を分けて見比べてください。あわせて、外気温の条件が近い期間どうしで比較しないと、緩和の効果と気候の差が混ざってしまいます。

空調機を新しくするのと、制御を入れるのでは、どちらが先ですか?

更新時期を過ぎた設備があれば更新が有力ですが、相応の初期費用と機器を止める期間が必要です。制御は既存の設備を残したまま導入でき、初期費用0円で始められます。設備の残存年数と予算の見通しで判断が分かれます。

まとめ

「設定温度1℃で約10%」は、空調機の消費電力に対する目安です。施設全体の電力使用量に直すと約4.8%になり、基本料金が動かなければ請求額の減り方はさらに小さくなります。掲示を出しても請求額が変わらなかったのは、この換算が省かれていたためです。

電気料金のもう一方の柱である基本料金は、設定温度ではなく最も高かった30分の使用電力で決まります。室温を緩められない施設ほど、この一点に的を絞った打ち手が現実的です。お手元の明細をご用意いただければ、基本料金をどこまで下げられるかを無料で試算します。

この記事を書いた人
株式会社Media Japan エネルギーソリューション担当
電気工事士資格を保有し、大規模施設への省エネシステムの導入から施工までを担当しています。記載の削減実績・目安額は、当社が実際に導入した施設のデータにもとづいています。個別の施設における削減額は、電気料金明細をもとに無料で試算いたします。
株式会社Media Japan/東京都豊島区東池袋1-25-6 PMO池袋2階
TEL 03-5985-5056 MAIL info@mediaj.jp
あわせて読みたい

高圧電力の電気代とCO2排出量を、同時に下げる|大規模施設向けサービス