オフィスビルの電気代を下げたいと考えたときに出てくる情報の多くは、空調フィルターの清掃、照明のLED化、クールビズの徹底といった内容です。どれも間違いではありませんが、年間の電気料金が2,000万円を超える規模のビルを管理している立場からすると、「それはもうやっている」という話ではないでしょうか。
それでも下がらないのは対策不足ではありません。管理側が動かせる範囲が最初から限られており、最大の固定費である基本料金は日々の節電努力とは別のルールで決まるからです。本記事では、その構造と我慢を求めない削減方法をまとめます。
オフィスビルの電気代対策が伸び悩む最大の理由は、消費電力の大半を占める専有部の使い方を、管理する側がコントロールできないことにあります。ビルの電力は共用部と専有部に分かれます。共用部は廊下・エレベーター・空調の熱源機・給排水ポンプなど。専有部はテナント区画内の照明・OA機器・個別空調です。
管理会社やオーナーが直接手を入れられるのは共用部と設備の運転だけです。専有部の使い方はテナント各社の判断であり、呼びかけることはできても実行は相手次第で、成果を削減額として見込むことは実務上できません。
一般に、事務所ビルの夏季の消費電力は、空調がおよそ48%、照明がおよそ23%、OA機器などその他がおよそ29%を占めるとされています。この割合は設備構成で変わりますが、空調が最も大きな塊であることは多くのビルに共通します。
呼びかけを軸にした節電には構造的な弱点があります。テナントの入れ替わりや異動によって毎年ゼロに戻ってしまうことです。設備側で自動的に働く仕組みに置き換えないかぎり、翌年また同じ説明会を開くことになります。
高圧で受電しているオフィスビルでは、基本料金の根拠になる契約電力が、直近12か月のうち最も使用電力が高かった30分間の平均値で自動的に決まります。この30分間の平均使用電力をデマンド値と呼び、契約電力50kW以上の施設ではこの方式(実量制)が採られています。1年を通じてどれだけ節電したかではなく、最も高かった30分の記録で決まる。ここが、日々の節電と基本料金がつながらない理由です。
真夏の午後、全フロアの空調が一斉に立ち上がるその30分の記録が残ると、以後12か月間、実際の使用量が少ない月でも同じ基本料金が請求され続けます。逆にいえば、山が立つ30分だけを抑えられれば、他の時間の使い方を変えなくても基本料金は下がります。
ビル全体で一括受電している場合、デマンド値は各テナントと共用部の使用電力を合算した値になります。個々のテナントが節電しても、時間帯がずれていなければ合計のピークはほとんど動きません。一方、共用部側の打ち手は効きます。全体の山が立つその30分に空調熱源の運転を短時間だけ調整できれば、合計値を押し下げられ、テナントに何も依頼せずに済みます。
デマンド値を常時監視する専用システムを入れ、上限に近づいた30分だけ空調熱源の運転を自動で調整すれば、テナントの使い方を変えないまま契約電力を下げられます。調整は空調を止めることではなく、複数ある熱源機の運転を短時間だけずらし、山の頂点を削る動きです。
建物の躯体には熱をためこむ性質があるため、数分単位の運転調整では室温はすぐには動きません。室温が変わる前に元に戻すことで、在館者の体感を変えずにデマンド値だけを下げる考え方です。当社が扱うシステムは、この制御方式について特許を取得しています。
設定温度を上げる運用や照明を間引く運用とは、そもそも狙う場所が違います。前者は電力量料金(使った分の料金)に効き、こちらは基本料金に効くため、両方を同時に進められるのが望ましい形です。
実際の削減額は、年間の電気料金の規模でおおよその見当がつきます。当社の導入実績にもとづく目安は次のとおりです。
| 施設 | 年間電気料金 | 削減額の目安 | CO2削減量 |
|---|---|---|---|
| 介護施設・小規模病院 | 1,200万円前後 | 年 70〜120万円 | 約15〜25t |
| オフィスビル・市役所 | 2,000〜3,000万円 | 年 150〜300万円 | 約30〜60t |
| 総合病院・ホテル | 3,000〜5,000万円 | 年 250〜450万円 | 約50〜90t |
| 工場・大型商業施設 | 5,000万円以上 | 年 400〜720万円 | 約80〜150t |
年間2,000〜3,000万円規模のオフィスビルであれば、年150〜300万円、CO2で約30〜60tが目安になります。ただしこれはあくまで目安であり、実際の削減額は熱源の構成やデマンド値の変動幅によって変わります。同じ延床面積のビルでも、山の立ち方が異なれば結果は違ってきます。
当社は、この方式で約3,500社・12,000施設への導入実績があり、システムは20年以上の稼働実績があります。
省エネの提案は見積書の金額だけでは判断できません。次の4点は契約前に確認しておくことをおすすめします。
提案した会社がそのまま施工するのか下請けに出すのかで、工事の質と不具合時の対応速度が変わります。電気工事士の資格を持つスタッフが在籍しているかを確認してください。当社は有資格の自社スタッフが施工を担当し、外部委託は行っていません。
多くの作業は稼働を止めずに進められますが、受変電設備の切り替えを伴う場合は短時間の停電が必要になることがあります。現地調査の段階で、停電を伴う作業の有無を書面で確認しておくと、あとの調整が楽になります。
設備投資として稟議を通すのか、削減できた電気料金の範囲内で支払うのかで、社内の通しやすさが変わります。当社では初期費用0円のスキームを用意しており、持ち出しの予算を確保せずに始められます。
CO2排出量が何トン減ったかを報告書として受け取れるかも確認してください。サステナビリティ報告や省エネ法の定期報告にそのまま使えると、担当者の作業が減ります。当社は削減額とあわせてCO2削減量を数値でご報告しています。
単価は変わっても契約電力自体は変わりません。単価交渉とピーク抑制は別の打ち手として、両方進めるのが効果的です。
制御は数分単位で行い、室温が動く前に元に戻す考え方です。建物が熱をためこむ性質を利用しているため、体感は変わりにくい設計です。
一括受電のビルであれば、共用部の空調熱源はビル全体のデマンド値に含まれます。全体の山が立つ時間帯にこの部分を調整できれば、合計値を下げられる可能性があります。
毎月の電気料金明細に記載される契約電力の推移で確認できます。導入前の同じ月と比べることで、基本料金の変化を追えます。
オフィスビルの電気代が下がりにくいのは、管理する側が動かせる範囲が共用部と設備運転に限られているためです。専有部の使い方に踏み込めない以上、呼びかけベースの節電では成果が積み上がりません。
一方で、基本料金は1年のうち最も高かった30分の実績だけで決まっています。この30分に合わせて空調熱源の運転を自動調整すれば、テナントに我慢を求めることなく契約電力を下げられます。年間2,000〜3,000万円規模のビルであれば、年150〜300万円が目安です。
自社のビルでどのくらい動かせるかは、電気料金明細の契約電力とデマンド値の推移を見れば、おおよその見当がつきます。当社では明細をお預かりして無料で試算しています。まずは現状の数値の確認から始めてみてください。