照明をLEDに替え、使っていない部屋の空調を止め、退勤時の消灯を徹底した。それでも届いた電気料金の請求額は、去年とほとんど変わらない——高圧で受電している施設の管理担当者から、こうした相談を受けることがあります。
努力が足りなかったわけではありません。高圧受電の施設では、電気料金の構造そのものが「使った量を減らす」だけでは動かないようにできています。どこに手を付けても効かない部分と、少し触れるだけで大きく動く部分が、はっきり分かれているのです。
この記事では、節電の効果が出ない原因を、電気料金明細だけで確かめられる順番に整理します。まず「効果が出ていない」のか「効果は出ているのに請求額では見えていない」のかを切り分けるところから始めます。
高圧受電の施設で節電の効果が出ない最大の原因は、電気料金のうち基本料金の部分が、使った電力量(kWh)ではなく契約電力(kW)で決まっているためです。こまめな消灯や不要な機器の停止は使用量を減らしますが、基本料金にはほとんど影響しません。
高圧の電気料金は、大きく「基本料金」と「電力量料金」に分かれます。電力量料金は使った分だけ増減しますが、基本料金は毎月、契約電力に単価を掛けた固定額として請求されます。使用量をどれだけ切り詰めても、契約電力が変わらなければ、この固定額は1円も動きません。
契約電力は申告制ではなく、当月を含む直近12か月のうち最も高かった30分の平均使用電力(デマンド値)で自動的に決まります。1年のうちたった一度、30分だけ記録した山が、その後12か月にわたって基本料金を押し上げ続けます。
これが、節電の努力が報われにくい理由です。365日のうち364日を丁寧に節電しても、猛暑日の午後に空調が一斉に立ち上がった30分が残っていれば、契約電力は下がりません。裏を返せば、狙うべきはその30分だけです。年間を通した我慢ではなく、山が立つ瞬間に自動で頭を抑える仕組みがあれば、基本料金は下がる余地があります。
使用量は確かに減っているのに請求額が変わらない場合、原因は節電ではなく、燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金といった単価側の上昇にあります。まず電気料金明細で、金額ではなく使用量そのものを前年と比べてください。
電気料金は「基本料金+使用量×単価」で決まりますが、単価の部分は施設側では動かせません。燃料費調整額は燃料価格に連動して毎月変わり、再エネ賦課金は年に一度改定されます。この2つが上がった年は、使用量を数%削っても請求額は横ばい、場合によっては増えます。ここを混同したまま「節電しても意味がない」と結論づけると、実際には効いていた対策まで止めてしまうことになります。
照明やOA機器から着手する施設が多いのですが、一般に、事務所ビルの消費電力では空調が最も大きな割合を占め、およそ4割から5割にのぼるとされています。照明をすべて切り替えても動かせるのは全体の一部です。使用量の大きい設備から順に着手しないと、かけた労力に対して結果が見合いません。
夜間や休日の消灯は使用量を減らしますが、デマンド値が立つのは平日の日中です。基本料金を動かしたいなら、時間帯を選ばない一律の節電ではなく、山が立つ数十分に的を絞った対策が要ります。使用量の総量と、30分単位の最大値は、別の指標だと考えてください。
高圧の電気料金では、力率が85%を上回る1%ごとに基本料金が1%割り引かれ、下回る1%ごとに1%割り増しされると定められています。モーターや古い蛍光灯安定器が多い施設では力率が落ちやすく、気づかないまま基本料金を余分に払っている場合があります。明細に力率の記載があるので、まず確認してください。
掲示や声かけによる節電は、始めた月は効きますが、数か月で元に戻るのが普通です。担当者が異動すれば引き継がれません。効果を維持したいなら、人が毎回判断しなくても働く仕組みに置き換える必要があります。専用システムでピークを自動制御する方法は、この点で人の入れ替わりに影響されません。
供給先の切り替えは単価に効く手段で、契約電力そのものは変わりません。一度下がったあと、単価改定で元の水準に戻ることがあるのは、このためです。単価は市況で動きますが、契約電力を下げた分は市況に左右されずに残ります。
山を抑える仕組みを外部に依頼する場合、契約前に次の3点を確認しておくと、あとで齟齬が起きにくくなります。
当社は約3,500社・12,000施設への導入実績があり、稼働実績は20年以上です。年間の電気代削減額は施設の規模により70万円から720万円、CO2排出量では年間数十トンの削減となった例があります。効果の出方は設備構成と負荷の出方によって変わるため、明細をもとに事前に試算します。
使用量(kWh)は翌月の明細で確認できますが、契約電力は直近12か月の最大値で決まるため、基本料金への反映には最大で1年かかります。過去のピークが12か月を過ぎて外れていくにつれ、段階的に下がっていきます。
警報器は「ピークが近い」と知らせるところまでが役割で、実際に機器を止めるのは人の判断です。警報のたびに現場が対応できていないと、値は抑えられません。知らせるだけか、制御まで自動で行うのかを確認してください。
設定温度の緩和は、一般に1℃で1割ほどの省エネ効果があるとされていますが、室温そのものが変わります。病院や商業施設では実行が難しくなる方法です。ピーク制御は室温を保ったまま、機器の立ち上がりが重なる瞬間を抑える方法なので、体感が変わりにくい点が違います。
下がるとは限りません。契約電力は総量ではなく、30分単位の最大値だけで決まります。総使用量が減っていても、山の高さが変わっていなければ契約電力はそのままです。
節電の効果が出ないとき、原因は努力の量ではなく、手を付けた場所にあります。使用量を減らす対策は電力量料金には効きますが、基本料金は契約電力で決まっており、直近12か月で最も高かった30分の実績が据え置かれたままでは動きません。
まずは電気料金明細で、使用量・契約電力・力率の3つを確認してください。使用量が減っているのに請求額が変わらないなら、それは節電が効いていないのではなく、単価の上昇に相殺されているだけです。そして契約電力が12か月動いていないなら、基本料金にはまだ一度も手が付いていません。そこが残っているうちは、削れる余地があります。