商業施設の電気代を下げたい。そう考えて調べると、出てくるのはLED照明への交換、空調の設定温度の見直し、営業時間外の消灯といった話ばかりです。すでにひと通り試している施設も多いはずです。
それでも請求額が思ったほど動かない。商業施設の管理者から寄せられる相談で、いちばん多いのがこの形です。理由は施設側の努力不足ではなく、商業施設だけが抱えている構造にあります。電気を使うのはテナント、電力会社に支払うのは館側。使う人と払う人が分かれている以上、館側が節電を呼びかけても実行される保証はありません。
この記事では、テナントの協力を前提にしない削減、つまり館側の判断だけで動かせる部分がどこにあるのかを説明します。あわせて、下がった分が館側とテナントのどちらに残るのかも整理します。
商業施設の電力使用量は、一般に空調が4〜5割、照明が2〜3割、冷凍冷蔵設備が1〜2割を占めるとされています。ここでは目安として、空調45%・照明25%・冷凍冷蔵12%・その他18%という構成で見ていきます。
この内訳を見ると、最初に手を付けられがちな照明の位置づけがはっきりします。すべてLEDに替えても、動かせるのは全体の2〜3割の、そのまた一部です。
ところが、その空調の大半はテナントの専有部に入っています。いちばん大きい部分に手を伸ばそうとすると、テナント一社ずつの合意が要る。ここが商業施設の行き止まりです。
商業施設の電気料金のうち、テナントとの合意なしに館側だけで下げられるのは基本料金です。基本料金は契約電力で決まり、契約電力は受変電設備で計測される館全体のピークで決まります。テナントごとの使い方に立ち入らなくても、館の入口で手を打てるということです。
高圧受電の施設では、契約電力は申告制ではありません。契約電力が500kW未満の実量制では、30分ごとの平均使用電力(デマンド値)を常時計測し、直近12か月で最も高かった30分の実績がそのまま契約電力になります。1年のうち30分の山が、その後12か月分の基本料金を決める仕組みです。
商業施設でその山が出る場面は、たいてい決まっています。猛暑日の開店直前に全館の空調が一斉に立ち上がる時間帯、セール初日、長期休館明けの再稼働。どれも無駄遣いではなく、営業として正しい行動が重なった結果です。
そして一度跳ね上がると、その水準の基本料金を12か月払い続けます。翌月から普段の使い方に戻っても、請求書の基本料金は下がりません。
ピークを抑える方法は、テナントに節電を求めることではなく、受変電設備の側で複数の設備が立ち上がる瞬間をずらすことです。設定温度を緩める、照明を間引く、営業を止めるといった、来館者や売上に響く手段は使いません。
専用システムが館全体の使用電力を常時計測し、デマンド値が上がりそうな局面で、空調の圧縮機などが同時に立ち上がらないよう順番をずらします。数十秒から数分単位の調整のため、館内の温度や明るさの変化としては体感されにくくなります。当社が扱うのは特許を取得した制御方式で、20年以上の稼働実績、約3,500社・12,000施設への導入があります。
削減額の目安は規模によって変わります。当社は年間電気料金2,000万円以上(月およそ170万円以上)の施設を対象とし、実績は年70万円から720万円の幅です。
| 施設 | 年間電気料金 | 削減額の目安 | CO2削減量 |
|---|---|---|---|
| 介護施設・小規模病院 | 1,200万円前後 | 年 70〜120万円 | 約15〜25t |
| オフィスビル・市役所 | 2,000〜3,000万円 | 年 150〜300万円 | 約30〜60t |
| 総合病院・ホテル | 3,000〜5,000万円 | 年 250〜450万円 | 約50〜90t |
| 工場・大型商業施設 | 5,000万円以上 | 年 400〜720万円 | 約80〜150t |
大型の商業施設は年間電気料金が5,000万円を超えることも珍しくなく、その規模なら年400万円から720万円が目安です。ただし削減幅は設備構成で変わるため、実際の数字は明細と現地調査で確認します。
館側が投資して電気代を下げたとき、その成果が館側に残るかテナントに流れるかは、電気代の按分方式によって決まります。ここを整理せずに稟議へ上げると、「下がるのは分かったが当社の収支はどうなるのか」で止まります。按分方式は、おおむね次の3つです。
ここで効くのが基本料金の扱いです。館全体のピークに課金されるため、どのテナントの使用量に紐づけるか切り分けられず、多くの施設で共用部の費用として館側が負担しています。裏を返せば、基本料金の削減は、どの按分方式でも館側の収支に直接効きます。
稟議の資料では、削減見込みを「基本料金の削減分」と「電力量料金の削減分」に分けて示してください。前者は館側に残り、後者は按分方式で行き先が変わります。合算額だけでは、決裁の場で戻されます。
商業施設の電気代削減は、業者選定の段階で結果の大半が決まります。提案を受けたら次の4点を確認してください。
受変電設備の側で制御するため、テナントの設備や使い方に変更を求めることはありません。ただし工事で短時間の停電が生じる場合は事前告知が必要で、要否は現地調査で確認します。
電力会社の切り替えは単価を下げる対策で、契約電力を下げる対策とは別ものです。単価が下がっても基本料金の根拠であるピークは残るため、切り替え済みの施設でも削減余地がある場合があります。
制御は館全体の使用電力に対して自動的に働くため、テナント構成が変わっても機能し続けます。ただし業種が大きく変わって負荷の出方が変化した場合は、制御条件の見直しをおすすめします。
電気料金明細の確認から施工まで、一般的な目安として1〜2か月程度です。施設の規模や受変電設備の構成によって前後します。
商業施設の電気代が下がりにくいのは、電気を使う人と料金を払う人が分かれているからです。テナントの協力を求める努力は続ける価値がありますが、それを前提にしない削減策を先に押さえておくと、話の進み方が変わります。
館側の判断だけで動かせるのは基本料金で、その額は直近12か月で最も高かった30分のピークで決まります。年に数回の山を受変電設備の側で抑えられれば、施設の使い方を変えずに契約電力を下げられる可能性があり、その削減分は按分方式にかかわらず館側に残ります。まずは電気料金の明細で、いまの契約電力を確認してみてください。